スキルアップやプライベートの充実など、今、30代以降の中年世代に「習い事」をする人が増えているようだ。
リクルートが発行するスクール情報誌『ケイコとマナブ』で毎年実施している、全国の20~34歳の有職女性を対象とした「人気おケイコランキング」調査によると、ここ数年のベスト3は、1位「英語」2位「フィットネス」3位「ヨガ」が不動の人気を誇っている。
面白いのは、4位以降の順位の移り変わりである。例えば、趣味系では2010年にBEST30以内にランクインしていた「フラダンス」「ゴルフ」「ダイビング」「ウォーキング」などが、2011年の調査では軒並みBEST30圏外に転落した一方で、「フラワーアレンジメント」「陶芸」「生け花」など心の落ち着くものがランクアップを果たしている。前者と後者を分類するなら、「動」と「静」。活動的なものよりも「癒し」を求めていることがよく分かる結果だ。
また、最近の習い事の傾向として、スキルアップや運動不足の解消、充実感、自信向上などに加え、コミュニケーションという言葉が注目されている。習い事を通して「出会い」を求める人が増えているというのだ。コミュニケーション不足が問われる現代に、「習い事」は共通の趣味でコミュニケーションを図る、新しい出会いの場としての役割も果たしているのかもしれない。
たとえば、料理教室に通う男性が、ここ10年の間に10倍以上に急増しているという。その理由の一つは、まさに男女の出逢いが目的。早い話が「婚カツ」だ。合コンなどが苦手でも、何か共通の趣味を通してなら話しやすく、溶け込みやすい。料理の会話や評価を通して会話も弾むし、お互いを褒め合うことも多くなる。キッチンを挟んで、結婚後の生活を擬似的に体験できるようなものだから、自然と二人の距離も近くなるというわけだ。
また、料理教室に通う男性が増えているもう一つの理由が、純粋に趣味として料理を学びたい男性が増えていること、そしてそれに呼応するかのように、料理教室にも男性専用のコースが続々と登場していることが挙げられる。さらに最近、テレビでも男性の料理人が料理の腕前を披露する番組が増えている影響も大きいだろう。プロの料理人だけでなく、コウケンテツのような料理研究家や、速水もこみちや照英のような男性タレントが、美味しそうな料理を楽しそうに作る様子が、男性の料理熱を刺激している。そのうえ、男性コミック誌でも「深夜食堂」(安倍夜郎・著)や「きのう何食べた?」(よしなが ふみ・著)など、自炊を始めたくなるようなレシピ付きコミックが流行ることも、料理に対する興味がかき立てられるのかもしれない。趣味の一つでもと思ったときに、料理は意外に手軽に思えるのだろう。
しかし、これまでの料理教室は女性ばかりのイメージが根強く、男性一人がそこに入り込むのは敷居が高かった。そこで、男性だけの料理教室を開講したところ受講者が年々増え続け、今では全国各地の料理教室でコースが増設されるほど、大ヒットの習い事ビジネスに成長している。ちなみに、料理という共通の趣味を通して、ビジネス以外の友人関係が広がる、男と男の「出逢い」も人気の秘密だという。
仕事に追われ、自分のための時間が疎かになることの多い昨今、習い事を通して、癒しや出逢い、自己を見つめる機会をもつことで、ストレスも和らぐ。成長やスキルアップだけでなく、仕事とは違った充実感を感じたり、人と出逢ったりする中で、心に余裕を生み出すことも習い事を始める大きな意味なのだろう。(編集担当:藤原伊織)