「国土強靱化」で建設関連がひろく買われた

2012年12月04日 11:00

 月が変わって12月も日本の総選挙、韓国の大統領選挙、アメリカの「財政の崖」問題大詰めと、「政治主導」は続く。11月30日のNY市場は3ドル高でほぼ横ばい。その日に発表された経済指標は、アメリカの10月の個人所得は前月比で変わらず、消費支出は0.2%減だが市場予測の範囲内。ユーロ圏の11月の消費者物価指数(CPI)は2.2%上昇で前月比0.3ポイント下落、10月の失業率は11.7%でユーロ導入以来最悪になったが、3日朝方の為替はドル円が82円台半ば、ユーロ円が107円台前半と前週末より円安が進行した。中国の11月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.6で前月比で0.4ポイント上昇と順調に回復をみせている。

 週末は北朝鮮のミサイル発射が近いと報じられて自衛隊が迎撃体制を整え、2日に中央道笹子トンネルの天井崩落事故が起こり、3日の東京市場では防衛関連銘柄や建設株、円安を好感した輸出関連株の上昇が予想される一方、「地政学的リスク」の影響で最近の株高を演出してきた海外の機関投資家が日本株の先物買いを手控えることも考えられた。

 フタを開けてみると、日経平均は38.19円高の9484.20円と買い先行のスタート。案の定、建設株が大いに買いを集め、防衛関連も石川製作所<6208>が大きく上昇したが、海外からの先物買いは全く衰えなかった。利益確定売りで上げ幅をいったん圧縮しても、HSBCが発表した中国PMI確報値(速報値を0.1ポイント上方修正)を材料にすぐに上昇に転じるという30日と似たパターンで、7ヵ月ぶりに9500円の大台に乗せた。しかし後場は9400円台に逆戻りし、後は小幅でもみあっただけで、日経平均終値は12.17円高の9458.18円だった。5日続伸してもローソク足は終値が始値を割り込む黒(陰線)になった。売買代金は1兆円を確保。韓国総合指数(KOSPI)も上昇しており、「地政学的リスク」はミサイルよりも先にどこかに飛んでいってしまったか。

 値上がりセクターは建設、不動産、鉄鋼、電機など。値下がりセクターは海運、電力、情報・通信などだった。建設株とともに三菱地所<8802>、三井不動産<8801>など不動産株が買われ、キヤノン<7751>は3日続伸でファーストリテイリング<9983>は12連騰。一方、DENA<2432>、ソフトバンク<9984>が売られてともに3000円の大台を割るなど情報・通信が不調だった。自動車株は後場に入って下げ足を速め、自動車部品のタチエス<7239>は公募増資が嫌気されて142円の大幅安になった。

 今日の主役は何と言っても建設関連株。値上がり率1位はPS三菱<1871>、2位が日本橋梁<5912>で、ともに上昇率は20%を超えた。両社とも高速道路の工事に関連がある。3位に安藤建設<1816>が入り、建設関連株で1~3位を独占。5位にハザマ<1719>、8位に三井住友建設<1821>も入っている。売買高1位はその三井住友建設で、2位に日本橋梁、4位に不動テトラ<1813>、9位に太平洋セメント<5233>、11位に長谷工<1808>も入った。大手ゼネコンも大成建設<1801>、大林組<1802>、前田建設<1824>が年初来高値を更新している。笹子トンネル事故で老朽化した公共インフラの補修工事の緊急性が改めて注目されただけでなく、政権公約で「国土強靱化計画」を唱え景気対策として公共投資を重視する自民党に追い風が吹き、「自民党関連銘柄」としても買われている。