耳鼻咽喉科医も大注目するスマートフォン向け新技術、軟骨伝導

2012年05月14日 11:00

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京都の半導体メーカーであるロームが、新技術を導入した軟骨伝導スマートフォンは、5月10日から新潟県で開催された「第113回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会」でもデモ機を展示。耳鼻咽喉科医をはじめとする来場した多くの人々の注目を集めていた。

 スマートフォンが爆発的に普及し、あらゆる業界でスマートフォン向けのサービスやアプリ・システムといったソフト面での開発・提供が活発化、日々、利便性向上に向けた進化を続けている。そうした中、京都の半導体メーカーであるロームが、新技術を導入したデモ機を公開。近時は大きな変化の無かったハード面での進化を実現している。

 ロームが提案する新技術は、軟骨伝導を利用したスマートフォン。通話の際に、電話機の角を耳の入口にある軟骨に当てるだけで相手の声を聞きとることが可能であり、騒音環境下でも快適な通話を実現するというものである。

 この軟骨伝導の原理は、奈良県立医科大学の細井裕司教授が2004年に発見したもの。通常、音は空気中を伝わって耳の穴から入り、外耳道を通って鼓膜を震わせることにより聞こえる。また、かつて携帯電話でも利用されていた骨伝導は、骨を振動させて直接内耳に伝えることで音が聞こえるものである。一方、今回細井教授の指導のもと開発・公開された軟骨伝導スピーカーでは、通常のルートと骨伝導に加え、軟骨を振動させることによって外耳道内で音が発生し鼓膜に届くという。聞きたい音が鼓膜の近くで生まれる特徴を持っており、耳に強く押し当てるほど音量が増すため、普段、騒音下で無意識に行っている動作により音量調節が出来る。また、骨伝導で聞く際に必要であった強い圧着も不要。さらに、そのまま軟骨で耳を塞げば外部騒音を遮断して、より鮮明に声が聞こえるものとなっている。

 軟骨伝導スマートフォンは、5月10日から新潟県で開催された「第113回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会」でもデモ機を展示。初日のメイン講演として細井教授から「軟骨伝導」技術が報告されたこともあり、耳鼻咽喉科医をはじめとする来場した多くの人々の注目を集めていた。

 電話機の角を当てるだけで良いため、液晶画面を耳や顔に接触させる必要がなく、皮脂や化粧等で汚れない、強く押し当てても耳が押しつぶされることがないといった波及効果もある新技術。振動パワーを角に集中させることにより、携帯電話裏面等の部位から気導音発生による音漏れも相対的に減少し、周囲に迷惑をかけずプライバシーも守れるという。先の学会で、実際にデモ機を体験した耳鼻咽喉科医から「大変興味深く、面白い技術。ビジネスシーンでの利用は、間違いなく進むのではないか」「これは使える。早く商品化してほしい」といった声が多く聞かれたが、消費電力や実装も従来のスピーカーと同程度でありながらこれだけの利点が得られるのであれば、早晩の商品化は間違いないのではないだろうか。

 現在はスマートフォンへの商品化提案とのことであるが、ポータブルオーディオプレーヤーや補聴器など、利用の可能性は多岐に渡る。軟骨伝導による受音がどこまでスタンダードな技術となるのか。日本発の理論・技術であるだけに、今後の動向に注目したい。