発達障害者 問われる災害支援のあり方

2016年05月14日 12:38

 4月14日に発生した熊本地震では、9万人を超える避難者が発生し、未だに多くの住民が避難生活を続けている。

 そのような中で、生まれつき脳の機能に特異性を持つASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)など発達障害者やその家族が、避難所などでトラブルに巻き込まれてしまったり、本来必要な支援を受けられなくなってしまったりするというようなケースが急増している。

 例えば発達障害者に多い特徴としては、聴覚や嗅覚などが通常より敏感であるということや、想定外の変化への対応が難しいといったことが挙げられるのだが、多くの人々が一箇所に集まり共同生活を送る避難所という環境、さらに地震という想定外の事態に対応しきれず、精神的に不安定になったりパニックを起こしてしまったりするという事例が多数発生している。さらにこうしたトラブルを回避するため避難所生活をせず、車中泊やテント泊などを行うという個人や家族も少なくはない。

 このような状況を踏まえ、国立障害者リハビリテーションセンター研究所内の発達障害情報・支援センターは「災害時の発達障害児・者支援エッセンス」を作成した。これは発達障害者の周囲の人々がどのように当事者と意思疎通をし、どのようなことに配慮すれば良いのかなどのポイントをまとめたものであり、同センターのサイトなどからダウンロードをすることが可能となっている。

 また日本自閉症協会も、「防災・支援ハンドブック」および、自閉症の当事者が周囲の人々に対しスムーズに支援を求めるのを補助する「助けてカード」などを作成した。こちらも同協会のサイトからダウンロードをすることができる。

 さらにその他にも自治体に設けられた発達障害者支援センターなどにおいても、窓口などで個別の事例に応じた問い合わせを受け付けている。

 同時に発達障害の当事者およびその家族に対しても、避難所に段ボール製のパーテーションなどを持ち込み、周囲から視界を隔絶したり騒音をシャットアウトしたりするなどして落ち着ける環境を作ったり、避難所に入らず車中泊やテント泊をする場合にも、地域ごとの配給リストから漏れ出ないよう十分注意、確認をしたりするなど、自助のための取り組みをすることが求められている。(編集担当:久保田雄城)