政府は今夏の電力需給に関する閣僚の検討会合にて、消費者や企業に節電要求をしないと決定した。需要の抑制が見込まれることや、九州電力川内原発1、2号機の再稼働と火力発電所の新設も手伝って、東日本大震災後初めて節電要請の見送りが実現しそうだ。
5月13日、政府は今夏の電力需給に関する閣僚の検討会合にて、消費者や企業に節電要求をしないと決定した。節電意識の定着で需要の抑制が見込まれることや、九州電力川内原発1、2号機の再稼働と火力発電所の新設も手伝って、東日本大震災後初めて節電要請の見送りが実現しそうだ。
電力供給は引き続き、火力発電所に大きく依存することになる。火力発電は石油、石炭、天然ガス、廃棄物などで生み出した熱エネルギーを電力に変換することで発電する。石炭が燃焼することで発生する硫黄酸化物(Sox)や窒素酸化物(NOx)、すすや燃えカスといった「ばいじん」によって、日本の高度成長時代は大気汚染問題が深刻であったが、40年以上にわたって環境対策技術が進歩し、現在の石炭火力の煙は浄化処理が行われた上で大気中に放出されているという。電源開発<9513>によると、日本の環境技術は世界トップクラスであり、大気汚染物質の90%以上を除去しているとのこと。
一方、5月17日、国内で石炭火力発電所の新設計画が相次ぐ中、環境NGO「気候ネットワーク」などは、「全て建設された場合、東京都と近隣県を合わせてPM2.5の排出量が現在の平均より1日あたり最大20%以上、愛知・大阪圏では5%以上増える」との予測をまとめている。「大気汚染により、肺がんなど健康が害される恐れがある」という。
火力発電のメリットについては、自然エネルギーよりも安定した品質の高い電力を需給でき、原子力発電とは違って発電量を柔軟に調節できるという声がある。また、万一事故を起こしても局地的な被害にとどまる。しかし、オイルタンクが破壊すれば、他の発電よりも生態破壊や土壌汚染などの被害が大きく長期的なものになるとの指摘も。
節電要請の見送りが決まったが、火力発電所の中には老朽化した設備もあり、大規模なトラブルがあると需給がひっ迫する恐れがある。原発事故や電力自由化で電力への関心が高まる中、今夏の節電要請の見送りも手放しで喜んでいいものか。日本の電力事情の先行きに不安を覚える人も少なくないだろう。(編集担当:久保田雄城)