「ワンコイン」という言葉を聞いて、何を連想されるだろうか。定食やファストフードのワンコインメニューなどは当たり前。今や、ワンコインで借りられるレンタカーサービスもある時代。そして、そんなワンコインビジネスの極め付けといえるのが、たった500円で気になる項目を気軽に検診できる「ワンコイン検診」だ。
一般的な健康診断は、費用や種類によって検診内容が異なる。たとえば、献血は血液検査も兼ねてはいるが、生活習慣病に関する必要な検査項目までは含まれていない。また、定期健診の中で行なわれる血液検査でも血糖の値を測る項目はあるものの、空腹時の血液の値を測定するという大原則が守られていないことも多い。血糖の基準値は60~109mg/dlだが、満腹時と空腹時では値が大きく変わってしまうので、検査前に食事をしてしまうと正確な値が測れなくなってしまうのだ。糖尿病をいち早く知るために最も重視する「HbA1c」(グリコヘモグロビン)も、一般の検診では自らリクエストしないと含まれていないこともあり、症状が見過ごされることも多い。
なぜ、そんな大事な項目が含まれないのか。それは費用がネックとなっているからだ。たとえば、人間ドックを受けた場合、健康保険の適応外となり「自由診療」扱いとなるので、血液検査を一通り受けたときの実費用は1~2万円もかかってしまう。一般の検診でも、コストを削減して最低限の検査項目だけを調べているのが現状だ。
そこで、注目され始めたのが、「ワンコイン健診」である。現在はまだ、ごく一部の限られた施設でしか実施されていないが、血糖値やコレステロール値、中性脂肪などの気になる項目を500円で気軽に検診できる、「ワンコイン健診」は大きな注目を集め、徐々に全国的な広がりを見せ始めている。糖尿病などの生活習慣病が気になる場合でも「ワンコイン健診」なら血糖値とHbA1cだけを限定して検査することもできるのだ。
発病してからの治療や定期的な検査を受診することを考えると、小まめに検診を受けて、病気は少しでも早く発見するのが望ましいのはいうまでもない。一項目500円で気軽に身体の状態を知ることが出来るのなら、検診に対するハードルもぐっと下がるだろう。
ワンコイン検診は医療行為なので、基本的には医療免許を持っている者が行うが、採血などはレクチャーを受けてセルフで行う場合もある。最初は戸惑うかもしれないが、慣れれば問題なく、逆にそれが気軽でよいという声もある。結果についての最終的な診断は医療機関で下してもらう必要があるが、現状の健康状態を把握する分には便利なシステムだと考えられる。(編集担当:藤原伊織)