矢野経済研究所は、国内の健診・人間ドック市場に関する調査を実施した。調査期間は2015年12月~2016年2月、調査対象は健診センター、健診・人間ドックを実施している病院・診療所等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、郵送によるアンケート調査、電話によるヒアリング、文献調査を併用した。
法定健診には、自治体が実施する住民健診や企業・団体等が従業員向けに実施する定期健診、結核・肺がん検診、母子健康法・学校保健法などに基づく健康診断、後期高齢者向けの高齢者健診などが含まれる。そのうち、40歳以上74歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(以下、特定健診)が2008 年から実施されている。その他に、利用者が任意で受診する人間ドック等の任意健診も実施されており、調査における健診・人間ドック市場はそのいずれも対象として算出した。
厚生労働省によると、特定健診の受診率は、2013年度で47.6%となっている。2011年度が44.7%、2012年度が46.2%と年々受診率は向上しているものの、第2期特定健康診査等実施計画で2017年度までの全国目標値として設定している 70%に対しては未だ低い水準にとどまっている。受診率の上昇により、メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少につなげ、将来的な医療費の抑制を図るという取り組みではあるが、未だ改善の余地が大きいと考えるとしている。
2015年度の国内の健診・人間ドック市場(受診金額ベース)は、9,040億円の見込であるとしている。市場を考察すると、特定健診の受診率は今後もアップしていくものの、少子化などの影響により法定健診の市場は横ばいから微増にとどまると考える。また、人間ドックなどの任意健診の受診者数の伸びが市場を牽引するが、任意健診の受診料については今後予定されている消費税増税分を値上げにより吸収できない可能性もあり、市場規模の大幅な増加は望めない見通しである。健診・人間ドック市場全体として、今後、受診者数は増加するが、健診単価は伸び悩むことで、2016年度の健診・人間ドック市場(同ベース)を前年度比100.7%の9,100億円に、それ以降もほぼ横這いに推移すると予測している。
この調査に関連し、健診施設に対してアンケート調査を行い、87件の施設から回答を得た。標準検査以外のオプション検査として実施している検査項目を尋ねたところ、骨/骨密度検査が最も多く、60件(構成比69.0%)であった。次いで PSA 検査が57件(同65.5%)、乳房触診+乳房画像診断が55件(同63.2%)と続いている。健診施設では、多様な検査ニーズに対応することで、他施設との差別化を図ろうとする意向が、調査の結果から伺えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)