東日本大震災以降、省エネ住宅設備などに対する注目が高まった。なかでも太陽光を利用した再生可能な電力を生み出す発電機器については、基礎的な技術発展や導入家屋に対する補助金制度の整備によって住宅への設置が急速に進んだ。
総務省統計局の概算によると太陽光発電設備を有する住宅は、2008年度までの累計が52万戸だったが、2013年度で累計157万戸に達するという。
このように日本の住宅向け太陽光発電普及は堅調に推移してきた。しかし、太陽光発電協会(JPEA)は日本国内における2015年度第2四半期(2015年7~9月)の太陽電池出荷量の調査を行ない、発表したその結果をみると厳しい状況が垣間見える。
調査結果によると日本国内の太陽電池出荷量の減少が顕著だという。2015年度第2四半期(2015年7~9月)の太陽電池モジュール総出荷量は、1979MW(メガワット)と、前年同期比で23%減少した。その前の第1四半期(同4~6月)は1737MW(同13%減)であり、減少の幅は広がる傾向にあるようだ。
国内出荷量では、個人住宅用の減少がより顕著となっており、前年同期比31%減となっている。500kW以上の非住宅用メガソーラーは堅調で前年同期比4%増だったが、500kW未満の非住宅向け小規模発電用は前年同期比で47%減と半減した。国内における太陽電池の需要減少は、固定買取り制度(FIT)の価格が引き下げられたことが要因とみられる。
矢野経済研究所でも、2015年における太陽光パネルの国内市場に関する調査結果を発表した。年度ベース(4~3月)で算出した2014年度の日本国内の市場規模は容量ベースで9700MW(メガワット)で、2015年度は前年度比1.2%減の9582MWに減少するという。
ここでもパネル供給量の減少要因として挙げているのが、再生可能エネルギーの「固定買取価格制度(FIT)」の買取価格の見直だ。同研究所でも太陽光発電システムへの国内需要は減少していくという予測を掲げる。
ところで太陽光発電を住宅に導入するメリットとデメリットとは何だろう? 一般的にメリットは「光熱費を削減できる」「売電できる(固定価格買取制度/2016年度経済産業省:31~33円/kWh)」「無尽蔵でクリーンエネルギーを創エネする」などが挙げられる。一方、デメリットとして、「発電量が不安定」「変換効率が低い(13~19%)」「設置費用が高く、売電価格が毎年下がっている」などだ。
■家庭用太陽光発電導入は急げ! 「売電メリット」は消滅する
太陽光発電のメリットの項でふれた“売電”価格は、2016年度は東京電力管内で31円/1kW、その他の電力会社が33円/1kWだ。が、経済産業省は太陽光で発電した電力の買い取り価格を2019年度までに段階的に引き下げ、現在の買い取り価格より2割以上安い価格設定とすると発表した。
2012年に始まった住宅用太陽光発電の固定買取制度では、当初42円/1kWだった。この高めの買い取り価格のおかげで家庭用太陽光発電は急速に普及した。が、高い買い取り価格は、太陽光発電を導入していない家庭の電気代に転嫁されているわけで、太陽光発電に対する行きすぎた優遇処置を是正する方針を打ち出したわけだ。
住宅用太陽光発電の固定買取制度は、一度買取制度が認可されると、以後10年間同じ価格で買い取って貰える。2016年度の家庭用買取価格は前述のように31-33円/1kWだ。この価格を2019年に家庭用24円/1kW程度に引き下げる。つまり、家庭用買い取り価格は電力会社が家庭向けに販売する電力価格と揃えようというものだ。
経産省は太陽光など再生可能なエネルギーによる発電などで、光熱費を実質ゼロとする「ゼロエネ住宅」を2020年に新築住宅の半数とする計画を立てている。買い取り価格を家庭用電気料金にまで下げて過度な優遇を改めるという。
太陽光発電設備導入を検討しているなら、早い着工ほど有利だ。
これらを踏まえて、日本国内を含めたパネルメーカーでは、既に太陽光パネルの製造・販売事業だけでは利益を確保することが難しい状況にあると判断。パネルメーカーは、メガソーラーの運転状況を監視し整備するO&M(運用保守)や、住宅向けでは太陽光発電を電気自動車、HEMS、蓄電池などを組み合わせることで付加価値を訴求する必要があるとしている。
いずれにしても、住宅向け太陽光発電の導入を検討しているなら「早ければ早いほど有利」である。(編集担当:吉田恒)