【今週の展望】本当は怖い、指標もイベントも少ない狭間の週

2016年07月10日 20:08

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雇用統計でNYダウは大幅高でも依然、円高。参議院選挙の結果はすでに織り込み済み。LINE上場の夏祭りも主力銘柄には影響せず、材料が為替レート一本槍の週になりそう。

 アメリカの主要企業の決算は4~6月期の業績発表の季節が始まる。今週後半の金融大手はNYダウの値動きへの影響が大きい。

 11日にアルコア、13日にヤム・ブランズ、14日にJPモルガン・チェース、ブラックロック、15日にUSバンコープ、シティG、ウェルズ・ファーゴが発表する予定。

 前週末8日の終値は、6営業日続伸後に4日続落して15106.98円だった。テクニカル・ポジションを確認すると、移動平均線は4本とも上にある。下から順番に5日線は335円上の15441円、25日線は743円上の15849円。75日線は16383円、200日線は17389円で、果てしなき宇宙へ遠ざかるばかり。

 日足一目均衡表の「雲」は、8日時点で6月SQ値16639円をはさんで16542~16827円にあった。8日終値から雲の下限まで1435円もあり、当分タッチできそうにない高層雲。今週は、雲の下限は16542円でずっと一定だが、雲の上限は少し動く。11、12日は16780円、14日は16700円、15日は16703円。この後、連休中の16~18日に「雲のねじれ」が起きる。前回は6月23日にねじれ、翌日は強烈な「変化日」を演じてくれたが、今回はいい方への変化日になるかどうか。

 ボリンジャーバンドでは、8日終値は25日線-2σの14814円と-1σの15332円の間に存在する。これは「下値は限定、上値は動ける」ロー・ポジション。-1σは8日朝に出た7月SQ値15331円と1円違うだけ。25日線+1σは16332円にある。

 オシレーター系指標は「売られすぎ」シグナルが2個点灯している。-4.9%で売られすぎ基準の-4%を下回った25日移動平均乖離率(売られすぎ基準が-5%なら点灯せず)と、29.2で売られすぎ基準の30を下回ったストキャスティクス(9日・Fast/%D)だが、どちらもほとんどボーダーライン上。それ以外はサイコロジカルラインが7勝5敗で58.3%もあり、騰落レシオが82.4、RSI(相対力指数)が36.8、RCI(順位相関指数)が-15.4、ボリンジャーバンドが55.2と、それほど下には寄っていない。総じて言えば「下値限定」とはっきりは言えず、もっと下押しされかねない危うさを秘めている。

 6連騰中だった7月1日時点の需給データは、信用買い残は24日時点から814億円減の2兆2872億円で、3週連続で減少。信用倍率(貸借倍率)は4.31倍から3.84倍へ3週ぶりに減少。信用評価損益率は-18.68から-15.84で2.84ポイント動き、3週ぶりに増加していた。裁定買い残は1299億円減の7503 億円で、5週連続減。2009年4月24日以来およそ7年3ヵ月ぶりの低水準だった。SQ週に入る前にこれだけ出すものを出してしまえば、前週の火曜、水曜の「鬼門」の鬼が開店休業気味だったのも納得できる。

 東証が発表した6月27日~7月1日の週の投資主体別株式売買動向によると、外国人は3週ぶりに105億円の買い越しに転じ、個人は逆に5週ぶりに119億円の売り越しに転じた。信託銀行は9週連続の2282億円の買い越し。外国人と個人は売り買いがほぼ均衡し、信託銀行は買越額を1032億円も増やしていた。株価が低迷した3月以来の買い越しの多さで、4日までの6連騰の主役はやはり、暴落を押し目買いのチャンスとみた年金資産だったようだ。

 カラ売り比率は、4日は40.9%、5日は42.2%、6日は43.5%、7日は41.8%、8日は44.1%と、毎日40%台。昨年あたりは40%台は「異常」と言われたが、これだけ頻発すると「異常も、日々続けば、正常になる」か? 本まで書いてカラ売りをしきりに勧めている株式評論家がいるが、何か構造的な変化が起きているのかもしれない。

 日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の7月8日終値は30.69。7月になってから高くても30前後で止まって落ち着いていたが、8日の高値は33.11まで上昇している。相変わらず東京市場はリスクオフに陥りやすい「恐怖」の影に脅かされている。

 8日に発表されたアメリカの6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数は+28.7万人で市場予測の+18万人を大幅に上回ったが、5月の数値が+3.8万人から+1.1万人に大幅下方修正された。それで失業者が増えた結果なのか失業率は4.9%で0.2ポイント悪化し、市場予測の4.8%より悪かった。平均時給は+0.1%で市場予測の+0.2%を下回った。良いのか悪いのか判断しにくかったのか為替レートは乱高下し、ドル円は99円台まで円高が進行したが結局100円台半ばに落ち着いた。NYダウ終値は好感して250ドル高。CME先物清算値は15340円だった。

 8日はいつもの週末要因に、「ETFが分配金を支払うための換金」という特殊要因が重なってほぼ安値引けの15106円まで下げたが、11日の日経平均は15350~15400円が起点になりそうだ。25日移動平均まで450~500円も離れているが、ボリンジャーバンド上では25日線-1σの15332円を超えてニュートラル・ゾーンに入る。オシレーター系指標もニュートラルで、為替のドル円も100~101円台の範囲なら、今週は上値をそれほど追っていけない。精いっぱい伸びても25日線の15849円付近ではないか。

 一方、朝にSQ値算出を通過した後の8日もカラ売り比率は44.1%まで上昇し、日経平均VIもはね上がるなど需給が改善していないので、前週の4日続落をもたらした株価の下押し圧力は引き続き強そうだ。