日米安保に双務性追求すれば憲法9条改正に

2016年08月10日 05:57

 政府は9日、首相官邸HPで「なぜ・いま・平和安全法制か?」の項目を追加、更新した。「尖閣諸島周辺海域での中国公船や中国漁船の活動状況」について紹介する部分を追加したもの。

 ただ、安保法制の紹介項目で、安倍内閣のカラーがうかがえる説明が数か所みられた。中でも「日本経済発展と『安保ただ乗り』論」の項目。

 ここで、政府は日米安保条約の『片務性』に触れ「大事な友人であるからこそ、自分の考え方や立場だけでなく、相手の考え方や立場に立ってものを考え、必要な協力や努力をする。また、一方的に相手に甘えないことにする、そうしないと、友人関係も脆くなりかねません」と友人関係を例にあげ「双務性を高めることは、信頼の絆を強め、より対等な関係を作り上げることにつながる。それは日本をより安全にすることにつながります」と説明した。

 しかし、安保条約の片務性(日米安全保障条約は戦争の放棄を規定する憲法第9条の下で、自衛に必要な最小限度の防衛力しか備えない日本が武力攻撃を受けた時、米国に守ってもらう=米国の義務=代わりに、米国には日本と極東アジアの平和と安全の維持のため、米国の陸海空軍に日本の施設、区域を使用できるよう基地提供するという義務を負う=日米安保条約第6条)ことが問題だとして、双務性を追求すれば、最終的には完全な血の軍事同盟となり、『自国の防衛のためでなく、憲法が認めていない、米国のために戦う自衛隊の創出』になる。安全保障のために憲法9条(戦争の放棄規定)の改正をしなければならないとする論理につながっていく。

 また、政府は安保法制と憲法の関係について「今回の平和安全法制では『必要な自衛の措置』がとれる場合に関して、日本に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合で、他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは憲法第9条解釈の基本的な論理に基づく『必要な自衛の措置』として、憲法上許容される」とさきの法案審議での説明を展開している。

 また「この考え方は1972年の政府見解で示した憲法解釈の基本的論理を維持するものです」と合憲論を展開。「他国を守ることそのものを目的とする集団的自衛権の行使は引き続き認められません」と書き込み、今回の集団的自衛権の限定的行使容認は憲法上、認められている範疇と訴え、理解を求めている。

 また、今回の安保法制成立に対し多くの国から支持や歓迎が表明されているとして、米国、英国、ドイツ、オーストラリア、オランダ、EU、フィリピン、インドネシア、バングラデシュ、スリランカ、パプアニューギニアの声を紹介している。一方で、米国とともに連携強化が重要な隣国の韓国や尖閣諸島で緊張を生じさせている中国の声は紹介されていない。特に北朝鮮問題など日韓米の連携が求められる中で、韓国の声は掲載することがバランス上も求められそう。(編集担当:森高龍二)