国内のIoTユーザー企業の47.9%が「限定的導入」

2016年08月12日 09:59

 IT専門調査会社 IDC Japanは、国内のIoT(Internet of Things)ユーザー企業に対し、IoTの取り組み状況について調査し、成熟度を分析した結果を発表した。これによると、国内ユーザー企業の47.9%が「限定的導入」(5段階中下から2番目のステージ2)の成熟度であることがわかった。多くの国内IoTユーザー企業においては、IoTの取り組みは一部の部署や一部のプロセスでのみ実施されており、組織全体のビジネス基盤として活用している企業は限られている現状が明らかになったとしている。

 企業のIoTの活用によるビジネスプロセスの効率化や競争力の向上への意識が高まる一方、IoTのユースケース(用途)は産業分野ごとに多様であり、またその活用レベルには企業ごとにばらつきがあるという。IDCでは、国内のIoT市場の成熟度について、「組織/人材マネジメント」「テクノロジー」「運用プロセス」「将来ビジョン」の4つの側面から調査した。調査(2016年4月実施)では、従業員数1,000人以上のIoTを推進する企業に所属し、課長職以上のIoTの意思決定になんらかの形で関与する163人に対してWebアンケートを実施し、これらを総合して国内企業のIoTへの取り組みに関する成熟度を分析しています。成熟度の評価は、IDC MaturityScapeに基づいて行った。

 IDC MaturityScapeとは、IoTを含めたIT環境の導入状況を客観的に評価するためにIDCが開発した手法。特定のIT環境についてまったく導入していない場合をステージ0(未導入)とし、導入後のユーザー企業の成熟度を、ステージ1(個人依存)、ステージ2(限定的導入)、ステージ3(標準基盤化)、ステージ4(定量的管理)、ステージ5(継続的革新)までの5段階で評価するものである。

 調査の結果、国内IoTユーザー企業においては、ステージ1の成熟度を持つ企業が2.8%、ステージ2が47.9%、ステージ3が36.1%、ステージ4が12.6%、ステージ5が0.6%であることがわかった。こうした傾向を米国の調査結果と比較した場合、日本企業の限定的導入(ステージ2)の割合は15ポイント程度高い一方、継続的革新(ステージ5)では米国企業の方が10ポイント程度高い結果になっており、両者には大きなギャップが見られた。国内の限定的導入(ステージ2)の割合が現時点で最も多く、ステージ3以上へのシフトが遅れている理由について、IoTの費用対効果が見えにくいこと、IoTに関わる技術標準が乱立しその選定が難しいこと、法規制が障壁となっていること、情報セキュリティ上の不安が払拭できないことなどが関係しているといえるとしている。

 IDC Japan コミュニケーションズ マーケットアナリストの鳥巣悠太氏は「第3のプラットフォームを中心としたIT技術を駆使することで、企業は単なるIoTユーザーではなく、IoTをベースとした『サービスプロバイダー』になることが可能になってきている」とみています。そして「企業はIoTのサービスプロバイダー化を進める上で、ITベンダーと従来のような顧客とサプライヤーの関係ではなく、ビジネスパートナーとして対等な関係を構築することが重要になる。それにより、両者が収益を最大化する上で遠慮なくビジネスアイディアを出し合うことが可能になり、結果としてエンドユーザーに対して付加価値の高いサービスを実現できる」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)