広がる“モノづくり”ムーブメント。個人・ベンチャー・企業が繋がる動きとは

2016年08月06日 19:23

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プログラム後半。参加者はワークシートに各自の作品アイデアを書き込み、それぞれ即興でアイデアを発表する「アイデア・ワークショップ」の時間。数人のグループでテーブルを囲んで話し合いながら企画案を練り上げる

 身のまわりのあらゆるモノをインターネットでつなぐIoT(Internet of Things)。近年、そのIoTが社会的に謳われはじめるのに伴い、企業やベンチャー、個人が繋がり協業する動きが活発化してきている。例えば村田製作所<6981>はベンチャー企業と協業し、「IoTアイデアコンテスト」を開催。ベンチャー企業の支援のもと、個人の斬新なアイデアや知恵を取り込み、時代の変化に対応し成長を目指すという。このように、企業や個人が密接に関係するほど、モノづくりの重要性・ブームが到来している。

 そんな中、半導体・電子部品メーカー、ローム<6963>の最新デバイスを使用したアイデアコンテスト「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」のデバイス体験イベントが、7月31日(日)東京・渋谷のFabCafe MTRL(ファブカフェマテリアル)で開催された。「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」は、「ローム」とWebサービスや空間デザインなどを手がけるクリエイティブ・エージェンシー「ロフトワーク」が協同で初開催する、“ものづくりのアイデア&プロトタイプ”を募集するコンテストだ。

 モノづくりが流行し、デジタルファブリケーション技術を活かした「新しい時代のものづくりの担い手」が求められているいま、ロームグループは長年培ってきたマイコンやセンサ、無線通信デバイスの技術を活かして、エンジニアやクリエイターが気軽に利用できる「キット」を用意した。これらロームの最新デバイスの特徴を活かして、「暮らしに役立つ何か?」「愉しいモノ」をつくるためのアイデアコンテストだ。当日は、学生、エンジニア、研究者などのほか、まったく異なる異業種からの参加など、女性を含む10代の若者からシニアまで40人近くの参加者が集まった。

 今回、「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」の対象となるキットは、以下の4種類。オープンプラットフォームArduinoハード互換のマイコンボード「Lazurite シリーズ」。8つの高性能センサー:加速度/気圧/地磁気/照度・近接/カラー/ホールIC/温度/紫外線を使用して、簡単にセンサプロトタイプを作ることができるセンサ評価キット「Sensor Shield」。モーションデータの取得に必要な4センサ:加速度/気圧/地磁気/角速度(ジャイロ)センサを搭載した小型センサモジュール「Sensor Medal」。そして電池不要(電池交換が要らない)の無線技術で、環境発電(エネルギーハーベスト)技術を利用した、バッテリー無しで稼働する無線通信モジュール「EnOcean」だ。

 まず、最初に実際にそれぞれのキット開発を手がけたロームグループ担当者が、各キットの機能概要説明を行なった。その後のフリー体験およびエンジニアへの質問時間では、サンプルキットを展示したカウンターに参加者が集まり、開発者にさまざまな質問を投げかけ、高いレベルの専門的な会話で盛り上がる。「デバイスを使ったシステムを想定したうえで、具体的な質問をする参加者が多かった」とロームの開発担当者が語るように、参加者たちは、デバイス実機に触れることで、作りたいモノのイメージが沸いてくるのか、その表情からアイデアの“芽”のようなものが生まれ始めている様子が伝わってくる。

 デバイス開発者と直接コミュニケーションしながらアイデアを生み出すという醍醐味が味わえた今回のイベント。個人アイデア検討タイムでは、進行役から参考テーマが提示されたが、「テーマを狭く絞り込んだ方が、尖ったアイデアが生まれやすいですよ」などと、参加者をフォローするようなシーンも。

 進行プログラムは後半の佳境に入る。参加者はワークシートに各自の作品アイデアを書き込み、それぞれ即興でアイデアを発表する「アイデア・ワークショップ」の時間だ。わずか30分程度の集中を要する時間である。その後、数人のグループでテーブルを囲んで話し合いながら企画案を練り上げ、ブラッシュアップしていく。

 完成したアイデアシート(企画案)すべてが、会場の壁に掲示される。生活を便利にするアイデア、公共空間を快適にする企画案、面白グッズなど、短時間で練り上げたアイデアが並ぶ。感心するほど、多種多様なアイデアだ。

 参加者ひとりに3枚与えられた投票シールを、“これは素晴らしい”と思った企画シートに貼って、参加者が直接投票する。

上位に入賞したのは、以下の3つのアイデアだ。「信号の要らない交差点/En Ocean」(9ポイント)、「渡り鳥を追いかけよう/En Ocean」(10ポイント)、「見えない防犯柵/En Ocean」(12ポイント)だった。いずれもEn Oceanを使った企画案だ。上位3名は、En Oceanの「“電池が不要の無線”に思いっきり惹かれた」と述べ、「これまで、存在すら知らなかったけれど、使い道は無限だ」と話す参加者もいた。今回の体験イベントで上位に入った企画案提案者3名には、デバイスキットがロームから提供される。

 また、一般の「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」への応募は、すでに開設している特設Webサイト(「ロームアイデアコンテスト」で検索)において、8月21日までアイデアを受け付けている。優秀作品提案者(10名程)にはプロトタイプ製作用部品が提供され9月25日までにプロト製品を提出。2次審査で最優秀グランプリ受賞者には30万円が贈られ、10月上旬に千葉・幕張メッセで開催される「CEATEC 2016」のロームブースへのプロトタイプ出品権利が得られるという。どのようなアイデアが生まれてくるのか期待したい。(編集担当:吉田恒)