自動車の電装化が進むにつれ、エレクトロニクスメーカーの自動車業界への進出が加速している。これまで、エレクトロニクス産業と自動車産業のすみ分けははっきりしていたが、電装化の進展だけでなく、1990年代以降の日系エレクトロニクスメーカーの業績低迷などを背景に、自動車産業でも従来の垂直統合型ビジネスモデルからの脱却を目指す動きが目立ち始めた。日本の二大柱である2つの産業の融合は、日本経済に何をもたらすのか。
電機メーカー大手のパナソニックも車載市場への積極的な展開を進める企業の一つだ。同社は強みである、デジタル家電で培った高度な画像処理技術や、小型化、光学レンズ技術などを、近年需要が急増している画像センサーやカメラモジュールに応用したり、メーターやスイッチ部分のデジタル化や液晶化によってシェアを広げつつある。今年5月に行われたIR説明会の席上でも、車載市場のシステム領域へ事業を拡大することにより、2018年度に売上2兆円、年率16%の高成長を目指すことを報告している。
また、目に見える所だけでなく、自動運転技術など、運転の電子制御化、駆動系の電動化などの部分でも自動車の電装化は確実に進んでいる。近年では廉価な価格帯の大衆車にも衝突防止やレーン逸脱防止機能が搭載されはじめており、今後は一般的な仕様として普及していきそうだ。
そんな自動運転化技術の普及を支えているのは、車載電子部品メーカーの努力である。自動運転の実現には、様々なセンサーや通信デバイス、収集した情報を処理し、駆動系などを制御するLSIやコントローラー、人工知能など多くの先端技術が必要となる。しかも、限られたスペースで収まるように小型・軽量であることが求められる。さらに、様々な厳しい環境下でも正常に動作することや長期にわたる耐久性能も要求されるため、精度や信頼性も当然高度なものが要求されるのだ。
車載用パッケージの小型化では、日本の電子部品大手のロームが力を入れて開発に挑んでいる。同社は、これまで車載用電装用で主流として使われてきたMOSFETのSOP8(5mm x 6mm)よりも大幅に小型化・軽量化に成功したAEC-Q101準拠の 3.3mm×3.3mmサイズMOSFET「AG009DGQ3」を開発し、9月13日に発表している。
同製品は、ゲート端子の中央にメッキに処置を施すことで、独自の形状のゲート端子を実現しており、基板と半田の接合面の増加によって、濡れ性バラツキを解消。これにより実装の際の視認性を向上させるとともに、ゲート端子と実装基板間に発生する半田クラックの抑制を抑え、実装の信頼性を実現するという。使用場所としては、ブロアモーターやオイル・ウォーターポンプ、ナビ・オーディオ、インジェクション、トランスミッション、各種車載モーターなど、多岐にわたる。中でも、これまで大型パッケージを使用せざるを得なかった信頼性の要求が高いエンジンECUでも、使用が可能となり、セットの小型化にも大きく貢献するという。
車1台あたり数百個搭載されるMOSFETを小型化できることで、自動車の電装化を今後さらに加速させるであろう。
エレクトロニクスと自動車。戦後日本の経済成長を支えてきた二大産業の融合が日本にもたらす経済効果は今後、大いに期待できるのではないだろうか。世界的に進む自動車の電装化・自動制御化の流れの中で、日本の繊細で真面目な技術は益々必要とされることだろう。(編集担当:藤原伊織)