日立製作所<6501>、NEC<6701>、三菱電機<6503>などの電機大手が、長期間に渡って取り組む基礎研究を外部と連携して行う動きを見せている。これまでは社外に情報を公開せずに社内で取り組む傾向にあったが、IoTやAIなどの新技術の登場や社会問題の複雑化などの背景もあり、従来の自前主義にこだわっていられないのが現状だ。
日立は「超スマート社会」の実現に伴う課題解決に向けて、基礎研究センタの約3分の1の人材を東京大学、京都大学、北海道大学に常駐させた。これまでは特定のテーマに限定した産業連携を行っていたが、今後は各大学に設立した「共同ラボ」にて、社会で解決すべきテーマを突き詰めていくという。
NECはオープンイノベーションの投資額を2018年度までに15年度比の倍にまで増やす。東京大学、大阪大学、産業技術総合研究所と連携し、主力テーマであるAIや脳型コンピューティングの研究のために自社の主力研究者を各機関に送り込むという。投じる資金は数億円規模。従来の産業連携の約100倍もの資金額がただならぬ意気込みを物語っている。
三菱電機はAIやIoTの関連テーマの強化に動く。16年度における大学との共同研究件数は前年度比1.5倍。海外とのオープンイノベーションの拡充に力を入れるという。
スマートフォンの音声対話システムや自動運転車などで耳にすることが増えたAIの研究開発については、トップを走る米国と比較して日本は周回遅れとの指摘もある。
AI研究は1950年代に始まり、現在は2010年以降の第3次ブームにあたる。ブームの谷間には技術的な問題で停滞した冬の時代があり、この間に日本で多くの研究者が開発から身を引いてしまったことが米国との格差を引き起こした要因と言われている。人材が減少し、研究が進まなくなると投資も伸びない。
国内で連携が活発になればいくらか遅れを取り戻せるかもしれないが、世界の競争に取り残されないためには基礎研究の次のステップであるビジネスを意識した取り組みも必要だろう。(編集担当:久保田雄城)