矢野経済研究所では、ポスト2020年の日本社会と成長産業に関するアンケート調査を実施した。調査期間2016年4月~8月、調査対象は国内の上場企業(東京証券取引所第一部、第二部、JASDAQ スタンダード、JASDAQ グロース、マザーズに上場する企業)の企画部門のビジネスマン(集計対象 272 件)上場外国会社は調査対象に含まない。調査方法は郵送(留置)アンケート方式を用いた。
まず、国内の上場企業の企画部門に所属するビジネスマン(集計対象 270 件)に、2016 年度から 2020 年度までの日本の実質GDPの平均成長率について尋ねたところ、「0~1%」という回答が55.1%で最も多く、「2~3%」が 29.0%、「0~マイナス 1%」が 8.5%と続いた。半数以上が「0~1%」程度の成長見通しとみている一方で、2%以上の成長が可能と回答したビジネスマンも全体の3割に達する結果となった。
また、回答者が所属する企業の産業セクターの2016年度から 2020年度までの平均成長率の見通しについて尋ねたところ、「ICT」が2.9%と最も高く、「サービス業」が1.5%、「製造業」が1.2%、「医療、化学、繊維」が 1.2%、「建設・不動産・倉庫」が1.1%と続いた。一方で、「商業」、「素材」、「食品・その他製造」については 1%に満たない結果となった。
国内の上場企業の企画部門に所属するビジネスマン(集計対象 272件)に、回答者が所属する企業の産業セクターにおいて、業界の将来に大きな影響を与える技術、ビジネス機会について尋ねたところ、「エネルギー」が 20.2%と最も高く、「自動運転」が 15.8%、「ICT」が 14.0%、「VR(Virtual Reality)、ドローン、ロボット」が 12.1%、「AI(Artificial Intelligence)」が 11.0%と続いた。
また、「クールジャパン、和食」は回答が2.9%に留まり、以下、「農業・養殖」、「防災」、「オムニチャネル、EC」、「人口問題」、「フィンテック」、「環境対策」、「アジア市場」、「TPP、規制緩和」、「労働問題」、「航空・宇宙」などは 1~2%台の低い回答率にとどまった。
日本政府は 2015年9月、2020年度を目処に名目 GDP600兆円の達成を目標として掲げた。GDP算出方法の変更で 18~20兆円を嵩上げしたうえで、名目ベースで平均年率約3%の成長が実現すればこの目標は達成できる。とは言え、現在の日本にとって名目3%という数値はハードルが高い。2016年7月に、政府は2016年度の実質見通しを年初の1.7%から0.9%へ、名目ベースで3.1%から2.2%へ下方修正した。2016年度から 2020年度までの実質GDPの平均成長率の見通しを尋ねたアンケート調査結果によると、半数以上が「0~1%」の見通しにとどまっている一方、2%以上の成長が可能と回答したビジネスマンも全体の 3 割に達しており、日本経済の成長とポテンシャルに対する期待と信任も決して悲観的なものではないと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)