10月25日、九州旅客鉄道が東京証券取引所1部に上場した。1987年の国鉄分割民営化で発足したJR旅客6社のうち、株式上場したのは1993年10月の東日本旅客鉄道、1996年10月の西日本旅客鉄道、1997年10月の東海旅客鉄道に続く、4社目の上場となった。
鉄道事業の採算が厳しいと言われた北海道旅客鉄道、四国旅客鉄道、JR九州の「3島会社」では初の上場となる。先に上場したJR3社は、利益率の高いドル箱路線を抱え、鉄道事業の営業利益は黒字を維持している。一方、「3島会社」は沿線人口の減少などから鉄道事業は赤字が続き、上場は難しいとされていた。この赤字を補填するため多額の経営安定基金の運用益で鉄道設備の維持費などを捻出してきた。こうした状況を背景に、JR九州はいち早く鉄道事業への依存からの脱却を目指し、株式上場を実現した。東京商工リサーチではJR旅客6社の経営状況を検証した。
6社の単体業績をみると、JR東日本とJR東海は、そろって2016年3月期に国鉄民営化後で過去最高の売上高と当期純利益を計上、JR西日本も過去最高の当期純利益を計上した。JR九州の2016年3月期の決算は、上場に向けた固定資産の減損処理などで大幅赤字を計上したが、売上高は過去最高を塗り替えた。
6社の本業である鉄道事業の営業利益は上場3社が黒字に対して、3島会社はそろって赤字だった。JR九州は赤字幅が年々縮小しているが、2016年3月期で115億円の大幅赤字を計上、3島会社では赤字幅が年々拡大しているJR北海道に次いで赤字額が大きかった。
単体の売上高に占める関連事業(非鉄道事業)の比率は、3島会社が上場3社より高くなっている。特に、JR九州は年々上昇し2016年3月期の構成比19.8%と飛び抜けて高く、同事業の売上高はJR東海、JR西日本を上回っている。グループ連結ではさらに上昇し、関連事業の売上比率は約6割に達している。これはJR九州がJR旅客6社の中で、いち早く脱「鉄道事業」に乗り出し、本業の赤字をカバーしていることがわかる。
全国の主要鉄道会社22社を見ると、2015年度でJR東日本が売上高トップ。JR3社がトップ3を独占。JR九州は売上高で6位。前年比較可能な21社では増収率が7.1%のJR西日本、阪急電鉄に次いで3位になっている。自己資本比率はJR北海道の68.7%、JR四国の57.3%に次いで高い。
九州新幹線全線開通の前日に発生した東日本大震災、そして今年4月の熊本地震を乗り越えJR九州は上場にこぎつけた。鉄道事業では上場3社のようなドル箱路線はないが、重要なインフラとして沿線住民や企業、文化、経済に欠かせない存在だ。今回の上場で得られる潤沢な資金とJRのブランド力を背景に、さらなる事業多角化で地域経済を活性化させるだろうとしている。九州経済をけん引する代表的な企業として、復興を目指す熊本県など各県の思いを込めて、「頑張ろう九州」の旗印となることが期待されているという。(編集担当:慶尾六郎)