AIが介護者不足を解消へ ヘルパーのリソースを最適化サービス提供開始

2016年11月18日 08:18

画.AIが介護者不足を解消へ ヘルパーのリソースを最適化サービス提供開始

要介護の高齢者が増加するなか深刻な介護者不足が叫ばれており、厚生労働省によれば2025年では約37.7万人の介護職員が不足すると見込まれている。介護職員が不足する要因として、15年度実施の「介護労働実態調査」では70.8%が「採用が困難である」と回答。

要介護の高齢者が増加するなか深刻な介護者不足が叫ばれており、厚生労働省によれば2025年には約37.7万人の介護職員が不足すると見込まれている。要因として、15年度実施の「介護労働実態調査」では70.8%が「採用が困難である」と回答。その理由として「賃金が低い」(57.4%)、「仕事がきつい」(48.3%)、「社会的評価が低い」(40.8%)などが挙げられている。厚生労働省の設置する「福祉人材確保対策検討会」においても、介護職の魅力発信や多様な働き方の後押し、給与体系の整備や経営理念の見える化による採用戦略の強化などを提案しているが、システムとして介護職員の働き方を改善する必要がある。

 こうした介護職員不足の課題を解決する可能性があるのがヘルスケアマーケット・ジャパンの展開するWebサービス「ユアマネージャー」だ。同サービスではAIを活用して訪問ヘルパーの最適な働き方を提案する。訪問ヘルパーは同サービスを通じて仕事を検索し、複数の事業所に応募。業務のマッチングが成立すると、希望の曜日と時間、自宅や最寄り駅の住所から、AIが最適な訪問ルートを導き出し、契約する事業所が抱える案件からシフトを調整、提案してくれる。

 今回提供を開始した横浜市内の10区では100の事業所がサービス登録済み。同市では「横浜市訪問型生活援助サービス」を10月より開始しており、介護に関する資格がなくても一定の研修を受けることで要支援者を対象とした訪問介護サービスに従事できる。介護業務は「仕事がきつい」ことを想起されがちだが、訪問介護の仕事のうちの42%は掃除や買い物など家事代行の延長である「生活援助」だ。フルタイムでの労働が難しい主婦などが空き時間を活用して家事で培った能力を活かすことができる。また、訪問ヘルパー等の介護職では1回のサービス提供時間が短いことや訪問先が離散していることから拘束時間のわりに実際の勤務時間が短くなってしまうといった課題があるが、AIが複数の事業所間での横断的なシフト調整により利用時間とヘルパーのリソースを最適なものにする。

 同サービスは今後3年以内に神奈川県と東京都、埼玉県、千葉県での展開を目指している。サービスの定着により介護職員と事業所、利用者の三者にとっての利益増大が見込まれるほか、運用方法によっては従来介護を専門の職業とする者以外の層もヘルパーのリソースとして取り込むことが可能であり、同様のサービスの普及が望まれる。(編集担当:久保田雄城)