生命現象を理解する上で重要な遺伝子がもつ機能の情報は、公共データベースに蓄えられ、世界中の研究者に利用されている。本来、生命現象は相互に繋がっているものだが、遺伝子の機能情報は別々に書かれており、それらの中に特別な関係があるかはこれまで解明されていなかった。
東京工科大学の応用生物学部の村上勝彦准教授らの研究チームは、人工知能(AI)を使い、相互に関係する遺伝子や機能をデータベースから自動的に見つける方法を開発した。10月より、ゲノム創薬などへの応用に向け、学外の研究機関との共同研究を開始したという。
研究では、ヒト遺伝子の機能情報をデータベースから収集し、ある特定の機能を持った遺伝子の多さなどの統計的情報を「非負値行列因子分解」という方法で総合的に解析した。その結果、遺伝子や機能情報の間に、書かれていなかった新たな相互関係を見つけることに成功した。
これより、生命の実験的研究によって蓄積された大量のデータを処理することで、その中に隠れていた関係を取り出せることが明らかになった。この仕組みを用いることで、AIが遺伝子の相互関係を自動的に探しだし、利用者が次に調べそうなことを先取りして解説するなど、さまざまな情報処理が高度になることが期待されるとしている。
今後、がんの疾患情報といった他のタイプのデータを加えることで、遺伝子同士の新たな結びつきの発見など、がんの分子メカニズムの解明に役立つことが期待される。また、他の生物種などに対象をひろげていくことで、実験可能な生物の研究が進むことが期待されるという。(編集担当:慶尾六郎)