ユーロッパサッカーも各リーグがシーズン後半に差し掛かり、優勝争いや降格争いの行方が気になり始めた。さらには今週からいよいよ最高峰とされるUEFAチャンピオンズリーグのベスト16でビッグクラブ同士が激突するなど、サッカーファンにとっては見逃せない日々が続くことになりそうだ。
しかしそれとは別に、毎年、年が明けると大きな話題となるのは、選手の移籍問題だ。1月いっぱいは冬の移籍市場がオープンになる為、ヨーロッパの各クラブチームは、シーズンを半分戦ったことで見えてくるチームのウィークポイントを補強するために、他チームの選手の獲得に乗り出すのだ。
1月31日で移籍市場は閉め切られたが、話題となったのは、セネガル代表のFWデンバ・バ(27)がイングランドプレミアリーグのニューキャッスル・ユナイテッドから同リーグの強豪チェルシーに移籍したことや、元ブラジル代表のFWアレシャンドレ・パト(23)が、イタリアセリエAの名門ACミランから母国のコリンチャンスに移籍したことくらいで、比較的大きなサプライズはなかった。今回の冬の移籍期限で、ビッグクラブが獲得に乗り出すと噂されていたCSKAモスクワ所属で日本代表の本田圭佑(26)の名前は今回の移籍リストにはなかった。
ロシアリーグの強豪CSKAモスクワでプレーする本田には、イングランドプレミアリーグの古豪リバプールや、同じく日本代表のSB長友佑都(26)がプレーするイタリアの名門インテルなど、数々のビッグクラブが興味を示していると報じられていたが、結局どのクラブもCSKAモスクワサイドが要求する移籍金(日本円で推定15〜16億)を用意することはできず、本田の今シーズンいっぱいCSKA残留が決定した。
長友がインテルに、香川真司(23)がマンチェスター・ユナイテッドに移籍し、海外のスーパースターと共にピッチ上で戦っているように、日本人選手にとってヨーロッパのビッグクラブへの移籍は夢ではなくなってきた。今や日本代表の大黒柱となった本田圭介にも、2010年の南アフリカW杯以降、移籍市場の解禁が迫ってくる度に、イタリアやスペイン、イングランドの強豪クラブなどからいくつかのオファーがあると噂されていた。
2009—2010シーズンの冬の移籍マーケットで本田がオランダ1部リーグのVVVフェンロからCSKAモスクワに移籍したときの移籍金は推定で約12億円とされていることから、その後の活躍を考えると、CSKAサイドが提示した移籍金は妥当という考え方もできる。しかし、ヨーロッパ主要リーグのクラブチームは財政難に苦しんでいるところが多く、この金額を簡単に出せるところは、スペインではレアル・マドリード、FCバルセロナ、イングランドではマンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、チェルシー、ドイツブンデスリーグでは名門バイエルン・ミュンヘンといったところで、世界中の誰もが知る巨大クラブチームに限られてしまう。さらに、CSKAモスクワの立場から考えれば、自らのクラブは潤沢な資金がある為、金額を落としてまで主力の選手を放出するとは考えにくい。
しかし、2013年の12月でCSKAモスクワと本田の契約は終了する。CSKAサイドは、本田をさらに4年間チームに引き止めるため多額の契約金を用意しているとも報じられている。今年で27歳になる本田圭介の選手としてのピークを考えると、契約終了間際となる今シーズン終了後の夏の移籍マーケットがビッグクラブ挑戦への最後のチャンスになるかもしれない。
W杯イヤー直前の移籍はサッカー選手にとってリスクがあると言われている。しかし、本田は2010年の南アフリカW杯イヤーにオランダからロシアのビッグクラブに渡り、その左脚で自らの存在感を見せつけた。そして、あの南アフリカ大会での活躍へとつながったことは言うまでもない。今回も、本田自身がビッグクラブへのステップアップを強く望んでいると公言している。CSKAモスクワの契約更新を拒否し、ビッグクラブからのオファーを待つというのは、この大切な時期に実戦から遠ざかるというリスクも出てくる。そうなれば、日本代表にとっても大きなマイナスだ。しかし、才能ある日本のカリスマレフティーには、いくら好条件を突きつけられたとしても、極寒のモスクワに留まり続ける選択肢は今のところないようだ。(編集担当:北尾準)