まばたきや心拍から疲労度や眠気を察知 高齢者・長距離ドライバーの事故防止センサー開発

2016年12月06日 08:00

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慶応義塾大学らは、ドライバーの疲労度や眠気、集中力などを非接触で推定できるアルゴリズムを開発した

 高齢者ドライバーによる事故が後を絶たない。警察庁が11月15日に公表した「交通事故統計」によると、10月末時点で、65歳以上のドライバーが起こした死亡事故は今年すでに783件起こっており、死亡事故全体の28.6%を占めるとのこと。高齢者ドライバーが事故を起こす要因としては運転技術の低下以上に、認知機能及び集中力といった精神機能の低下が問題となっている。こうしたなか、慶応義塾大学らは、ドライバーの疲労度や眠気、集中力などを非接触で推定できるアルゴリズムを開発した。同技術では、人の微細な動きに反応するドップラー効果を利用したセンサー(ドップラーセンサー)によって心拍やまばたき、呼吸を検出。その変化により、心電図波形の周波数解析と同様その人がどのような精神状態にあるかを推定する。非接触でまばたきを検出する技術は国内初となる。

 従来、運転時など動きのある時においては検出される数値の変動が大きく、ドップラーセンサーによる正確な測定は難しかった。今回開発された技術では、体の動きの影響除去及び、雑音低減、信号の識別などの信号処理に成功。デスクワーク時を想定した実験では、体に装着するタイプの一般的な心電計による計測と同程度の精度を実現した。

 疲労や眠気、集中力の低下による運転時の事故をシステムによって防ぐ方法として、視線センサーを取り入れた安全運転支援システムなどが開発されているが、カメラなどの設置が必要となりコストがかさむことが普及の障壁となる。ドップラーセンサーを組み込んだ測定モジュールは、安価で導入できてウェアラブルデバイスなど特別な機器の装着が不要なため心理的負担も少なくて済む。

 精神状態の推定に活用できる同技術は、運転時の事故を未然に防ぐ用途以外にも、デスクワーク時の集中力や快適性の把握、ストレス度の測定などさまざまな用途での活用が期待されている。今後は複数の項目を同時に検出するアルゴリズムを実装し、数年内での実用化を目指しているとのこと。精神状態の自己判断は過信や思い込みで歪みがちだがセンサーによる客観的な数値を示されることで、たとえば免許返納といった、行動の修正に向かわざるを得ない。同技術の応用により解決できる課題は多いと考えられ早急な実用化が望まれる。(編集担当:久保田雄城)