日本からのエントリーは初めてとなる学生のソーラーハウス建築競技会に、千葉大学チームの「おもてなしハウス」の出展が決定し、注目を集めている。
この競技会の名称は「ソーラー・デカスロン・ヨーロッパ2012」。アメリカのエネルギー省が主催する国際的な20大学を対象とした建築競技会で、02年よりアメリカで開催され、10年には初めてヨーロッパ(スペイン)で大会が行われた。千葉大学チームが出場する今大会は9月にスペインのマドリードで開催される予定。陸上10種競技での馴染みが深い”デカスロン”だが、この競技会はソーラーハウスの10種ということで、省エネ性能をはじめ、デザイン、サステナビリティ、市場性などの10項目で競われる。
しかし、この競技会が注目されているのは、最大の特徴とも言えるプロジェクトの主体が大学生であり、その推進に出場大学の国の協力や参加企業などを募るプロジェクトが実行されていることだ。後援の国土交通省をはじめとする千葉市や柏市、建物を協力する民間企業は積水ハウス 、カネカ 、三井不動産 など約50社を数え、産学官連携事業としては異例の参加数となる。
このプロジェクトに参加する企業の中で、建物自体の外装や設計支援などメインスポンサーを務めるのは積水ハウス。同社は07年より、千葉大学と共同で研究・開発を行ってきた「ケミレスタウン・プロジェクト」以来の付き合いで、今回もその成果を活かした化学物資を軽減する空気環境の提案を行う。また、出展される「おもてなしハウス」のベースとなっているのは同社の商品「ビー・サイエ」で、環境配慮型住宅「グリーンファースト」モデル。この物件は高い耐震性・耐久性・断熱性を実現する独自の工業化住宅で、実際の住宅は24時間体制による邸名別生産を実現するという効率の高さを誇る。
出展される「おもてなしハウス」は他にも日本が誇る技術やデザインが数多く存在する。例えば、この住宅のメインとも言える太陽光発電システムのソーラーパネルはデザイン性の高い”瓦一体型”となっており、深い軒先やリビングと縁側の中間領域”スローリビング”には独特の情緒を感じることができる。また、珍しいいぐさ畳の壁や和紙貼りの天井は日本の天然素材が活かされた内装だ。
3月28日に千葉大学でお披露目となった試作棟の内覧会での記者会見場の席でこのプロジェクトの田島翔太学生代表は「今回の出展では総合大学の特色を活かし、工学部だけではなく医学部や園芸学部などの研究成果も取り入れおり、食・農・健康・環境といったトータルに考慮した特色のある次世代型住宅の実現を目指し、優勝に向かって頑張る」と力強く語った。
日本国民が高い意識を持つエネルギー問題。その解答例が今回の「おもてなしハウス」にはたくさん詰まっており、それに懸命に取り組む学生達とサポートする企業や官公庁のプロセスから結果までは、数多く露出されるべきだ。産学官連携の注目度の高いこの事業は、世界に日本の”ものづくり”における技術力の高さをアピールできる絶好の機会であり、若い世代が国際競争の場に触れる貴重な体験となる。千葉大学のメンバー達にはヨーロッパという歴史ある地域に、日本人の心の価値観である「おもてなし」