トヨタ「TNGA」による新パワートレーン、2017年市場投入。2021年までに大幅刷新

2016年12月30日 19:32

Toyota_New_PowerTrain

今後市場投入するパワートレーンの技術説明を行なったトヨタ・パワートレーンカンパニー・プレジデントの水島寿之氏(写真右)と同・バイスプレジデントの岸宏尚氏

 トヨタは、年末になって新パワートレーン群の内容を発表した。「いいクルマづくり」のための構造改革、ならびに新しい開発手法「Toyota New Global Architecture(TNGA)」により、エンジン・トランスミッション・ハイブリッドシステムなどパワートレーンを一新する。優れた走行性能と高い環境性能の両立を追求し、大幅に進化させた新型パワートレーンを2017年以降、一気に搭載車種を拡大していく。

 トヨタはTNGAにより、クルマを骨格から見直し、低フード化および低重心化で運動性能の向上を図り、クルマの「走る」「曲がる」「止まる」という3大基本性能をレベルアップさせるために、プラットフォームを中心に全面的に見直し、2015年発売の4代目プリウスでその成果をみせた。以降、C-HRなどに新プラットフォームを採用して拡大に取り組んでいる。

 同時に、クルマの動力性能を決定する中核であるパワートレーンについても、低重心化とともに、優れた走行性能と高い環境性能を両立させるための開発に取り組んできた。その新開発パワートレーンの一部を発表した。

 今回、新たに開発したパワートレーンは、軽量・コンパクト化、低重心化、エンジンの高速燃焼、トランスミッションの多段化・高効率化など基本性能を徹底的に見直し、実現した基本骨格を統一化したモジュール設計(統一設計)を行なった。この新型パワートレーンにより、動力性能を約10%アップさせながら、燃費は約20%向上させている。

■具体的に発表されたパワートレーンは大きく3種

 まず、新型「2.5リッター直列4気筒直噴ガソリンエンジン」で、通常のガソリン車用とパラレル型ハイブリッド用の2種のチューンがある。この新型エンジンは超ロングストローク型(ボア×ストローク87.5×103.4mm)で、高速燃焼技術、可変制御システムの採用のほか、排気・冷却・機械作動時などのさまざまなエネルギーロスを排して熱効率を向上させ高出力を獲得した。トピックはその熱効率の高さ。ガソリン車用が熱効率40%、ハイブリッド用が41%と世界トップレベルを達成した。こうして得られた出力&トルクは、ガソリン車用が151kW/6600rpm、250Nm/4800rpm。ハイブリッド用が130kW/5700rpm、220Nm/3600-5200rpmである。この新型エンジンは「ダイナミック・フォース・エンジン」と呼び、異なる排気量の新型エンジン・ラインアップとし、環境性能と出力性能を大幅に向上したエンジンだ。また、開発するエンジンの種類を約40%削減する方針をも明らかにした。

 ふたつ目はトランスミッション。多段化した新型「8速&10速オートマチックトランスミッション(Direct Shift-8AT/10AT)」である。8ATはFF車用で、トップレベルの伝達効率で省燃費に貢献、さらに小型軽量低重心による運動性能を向上させる。

 もうひとつの多段オートマティックである10ATは、プレミアムFR車用のトランスミッションだ。10速に段数アップして低中速域を中心に各段の使用領域(段数)を最適化するクロスギヤレシオを採用。FRプレミアム車にふさわしいスムーズで世界最速レベルの素早い変速が生み出すリズミカルで“気持ちの良い走り”を実現するという。

 いずれのトランスミッションも実用的な走行シーンでの基本性能を高めていることが特徴だ。

 真骨頂は、新しい2.5リッターエンジンと共に新開発したハイブリッドシステムで、FR用の「高性能マルチステージTHSⅡ」である。

 この新型「THSⅡ」は、小型・軽量・低損失化技術と、TNGAによる新型エンジンの高い燃焼効率と高出力とのシナジー効果により、優れた動力性能・低燃費を高次元で追求した。マルチステージTHSⅡは、ハイブリッド車の走りのイメージを一新する高い発進加速性能とダイレクト感ある走りを実現。高速走行時のシステム効率の向上に加え、高速域でもエンジン間欠運転を可能にすることで高速燃費を向上させた。

 プラグインハイブリッドシステムも一新した。従来のモーター走行に加え、これまで発電機として使用していたモーターを、走行用としても使用するデュアルモードドライブシステムにより、力強いEVモード走行を実現する。

 搭載車種などには触れていないが、レクサスGS/ISやクラウンなどに採用されるだろうシステムと言える。

■2021年までにエンジン9機種、ハイブリッド6機種、トランスミッション4機種の新型投入

 トヨタが今回発表した新型パワートレーンは、これだけにとどまらない。今後、2021年までの5年間でトヨタは、エンジンにおいて今回発表した2.5リッターガソリンエンジンを含めて9機種17バリエーション展開を予定。トランスミッションは、多段化AT、新機構の無断変速機(CVT)など4機種10バリエーション。ハイブリッドシステムは、6機種10バリエーションの投入を予定しているという。

 このようにトヨタは、今後、TNGAによるモジュール開発により、短期間で多くの機種を展開する予定だ。搭載車種は、2017年発売の新型車を皮切りに順次拡大する。当面、5年後の2021年には、トヨタ単独の年間販売台数(日本・米国・欧州・中国)の60%以上をTNGAモジュール車両とする計画だ。

 これにより、2021年のトヨタ単独販売車からのCO2排出量の削減効果は、新型パワートレーンの燃費向上寄与分だけでも、15%以上を見込んでいる。

 同時に、パワートレーンカンパニーの開発体制も見直し、強化を進める。現在市場の大多数を占める自動車は従来型エンジン車であり、今後さらなる普及が進むHVやプラグインハイブリッド車(PHV)もエンジンを併用している。当面、主流となるエンジン・トランスミッションの開発促進に加え、車両電動化の推進に向けて、モーター、バッテリー、パワーコントロールユニット(PCU)などの電動化技術の開発を加速していくとしている。(編集担当:吉田恒)