2017年、訪日観光客の増加が見込まれる中で、日本の航空業界はますます熾烈な競争にさらされるだろう。その要因としてはやはりLCCの台頭だ。ジャットスター・ジャパンやピーチ・アビエーションといったLCC各社は国内線はもちろん、需要が高い近距離国際線も強化。これまで日本航空<9201>と全日空<9202>の牙城であった国際線に切り込んでいく。更に韓国や中国からもLCCが次々に参入。近距離国際線を中心に競争が激化することが予想される。
成田空港ではすでにLCC専用ターミナルが出来、関西国際空港では1月に、中部国際空港でも今後整備が計画されており、ますますLCC利用者は増加の一途を辿ると予想される。搭乗率で見ても大手航空2社は70%前半なのに対し、LCCは80%代となっている。今後苦戦も予想される。
日本航空は12月12日から行なっている「どこかにマイル」。通常の半分ほどのマイルでどこかの空港までの往復航空券が手に入り、利用者には「ミステリーツアーのようでおもしろい」「お得に旅行が行ける」と評判になっているが、この企画を始めた背景としては搭乗率の改善だ。特に地方路線は搭乗率が低く、特典航空券によって搭乗率を少しでも向上させることと、国内旅行の需要を高めたい狙いがあると言われている。
国際線でも便数は全日空に差を付けられている他、ドル箱路線であるハワイ線も近年日本路線に力を入れているハワイアン航空に押されるなど、競合他社にシェアを奪われている現状がある。16年3月決算期では過去最高益を記録した日本航空だが、10月に発表された第二四半期連結業績決算では、相次ぐテロや、熊本地震での需要低下が要因となり、減収に転じた。一方で経営破綻後初となる社債を200億円発行。国際線に投入するエアバス社のA350に充てる計画。また、アメリカン航空とも提携を強化。米国線のサービスを充実させていく方針。減収となった日本航空だが、経済性が高く快適なA350の導入などで巻き返しが期待される。
全日空は国際線路線を拡大し、日本航空を巻き返し。今後はアジアやハワイを中心としたリゾート路線を強化する方針だ。その決意はエアバス社の巨大旅客機A380の導入にも表れている。同社は19年にA380を3機受領し、成田-ホノルル線に投入することを決めている。これによって現在の座席量の2.5倍を確保できる見込みで、現在同路線のシェア10%であるものを24%にまで引き上げる狙いだ。
一方国内線では日本で初めてエアバスの最新鋭旅客機A320neoを導入。小型機でありながらも、パーソナルモニターや機内Wifiなど充実した装備で顧客満足度を向上させるとともに、優れた経済性で運航コストを低減させる。同機を需要の高い国内線のビジネス路線や、近距離国際線に投入する。
これまで国際線を中心に強い牙城を守っていた日本航空だが、近年では全日空やLCCに押されている印象がある。この構図は17年も続くと思われる。台頭するLCCに、牙城を守る大手航空会社、そして新規参入する外資系の航空会社と、日本の空はますますカオスな状態となっていくだろう。東京オリンピックを控え、訪日観光客の増加がますます見込まれる中で、今後業界がどのように変わっていくのか、注目したい。(編集担当:久保田雄城)