自動車部品開発から生まれた若返る日傘とは

2017年01月16日 08:19

画.自動車部品開発から生まれた若返る日傘とは

デンソーは、自動車の技術を転用して、肌に有害な紫外線を特殊な波長の赤色光に変換することで肌が若返る日傘を試作した

 携帯電話が軍事用無線技術の転用により開発されたように、本来の目的以外への技術転用により開発された優良プロダクトは数多くある。デンソーは、自動車部品開発の技術を転用して、肌に有害な紫外線を特殊な波長の赤色光に変換することで肌が若返る日傘を試作した。同プロダクトは今年1月5日~8日にかけて開催された、コンシューマ・エレクトロニクス分野の見本市「CES2017」に出展されたもの。紫外線は肌にとって有害で、シミやシワの原因になるものだが、同社開発の樹脂をコーティングした透明な日傘を介すことで、それが633nmの波長の赤色光に変換されて肌に届く。この波長の赤色光は肌を傷めず修復を促進する効果があることが分かっている。赤色光は表皮だけでなく真皮に届き、線維芽細胞を活性化。その結果、コラーゲン繊維やエラスチン、ヒアルロン酸の生成が促され、傷ついた真皮を修復するとのこと。

 紫外線を赤色光に変換する樹脂は、同社が自動車のフロントガラスや窓ガラスのコーティング用に開発したものだ。しかし、耐久数年や紫外線の変換効率が、自動車へ適用するのに十分でなかったことから、別用途での転用を考えたとのこと。

 デンソー以前でも、他分野の技術転用により有用なプロダクトを生み出した例は枚挙にいとまがない。有名なものでは、今では多くの家庭で役立てられているお掃除ロボットの「ルンバ」がある。米iRobot開発のルンバに搭載されたナビゲーションアルゴリズムやセンサー技術は地雷除去ロボットを応用したものだ。また、放射線ビームが動きのある患者の生体にある病巣を追尾して、正確に照射する「サイバーナイフ」は、米スタンフォード大学のジョン・アドラー教授により、巡航ミサイルに使われた誘導システムを応用して開発されたものだ。このように技術の転用により別用途でのソリューションを生み出す例は多く、よりハイエンドなプロダクトに用いた技術を一般的なプロダクトに落とし込むことで、精度そのままで製造コストが下がり、普及サイクルに乗る。デンソーの肌が若返る日傘は、現在発売の予定はないものの、応用製品開発への期待が持てるだろう。(編集担当:久保田雄城)