【今週の振り返り】 要人の「口から出れば世界」で149円下落した週

2017年01月21日 20:19

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トランプ次期大統領のドル高懸念発言、英国のメイ首相のEU完全離脱発言、イエレンFRB議長の利上げ回数発言、ムニューチン次期財務長官の強いドル発言

 19日の日経平均は大幅続伸。英国の9~11月期の失業率は4.8%で11年ぶりの低水準を続け、市場予測と一致。ドイツのCPI確定値は上方修正。平均株価は英国、ドイツでは上昇、フランスでは下落。NYダウは終了前に値を戻したが22ドル安で4営業日続落。NASDAQ、S&P500はプラス。

 要人発言に振り回されるアメリカのマーケット。きのうトランプ、きょうイエレン。FRB議長はサンフランシスコでの講演で、「利上げは2019年まで年2~3回が適当。2019年末までに金利は3%に接近する」と発言。それが午後の急速なドル買いを呼び、平均株価も下げ幅を圧縮した。10~12月期の企業決算は金融セクターが好調でその株価も上昇。ゴールドマンサックスは純利益が約3倍、シティGは7%増益で、ともにEPSが市場予測を上回った。一方、年末商戦の結果が良くなかった小売セクターは苦戦し、ターゲットは業績予想を下方修正し大幅安。地区連銀経済報告(ベージュブック)は全米12地区全てで製造業の業績が改善し「物価上昇圧力がいくぶん高まる」としたが、アメリカ経済は決して絶好調とは言えない。それは経済指標も示しており、12月のCPIは前月比+0.3%、前年同月比+2.1%と伸びが加速したが、鉱工業生産指数は+0.8%でも11月分を下方修正した。設備稼働率は市場予測を上回る75.5%でも、NAHB住宅市場指数は11年ぶりの高水準だった前回から低下し、市場予測も下回っていた。

 カナダ中銀が政策金利を据え置き。そのカナダ、メキシコと結んだNAFTA(北米自由貿易協定)についてロス次期商務長官は連邦議会で「再交渉する」と言い、貿易不均衡国として中国を名指しで批判した。トランプ政権の通商政策に嵐の予感。原油先物価格は終値51ドル台に反落、金先物も反落。イエレン発言でアメリカ長期金利はさらに上昇し、朝方の為替はドル円が114円台後半、ユーロ円が121円台後半。大阪夜間取引終値は18940円。CME先物清算値は19010円。

 日経平均始値は188円高の19082円。高値は9時38分の19122円。安値は0時43分の18982円。終値は177円高の19072円。日経平均は大幅反発し19000円台を回復して始まる。TOPIXも2ケタの上昇でスタート。序盤で19100円にタッチ。為替のドル円レートは115円をうかがう動きだが、10時台になっても日経平均は19100円台に定着しそうで、できない。ドル円も115円にタッチしない。反落で始まった上海市場に影響されたのか、リスクオンが中途半端な状態は11時台も続き、19100円に届かない水準で前引け。日経平均3ケタ高、TOPIXは2ケタ高なので日銀のETF買いはまず入らない。

 後場はほぼ前引け水準で再開するが、0時台、ドル円が少し円高方向に振れて114円台半ばになると日経平均も下落して19000円を割り込むものの、瞬間で終わる。1時に不動産経済研究所から12月の首都圏・近畿圏マンション市場動向が発表された。新築マンション発売戸数の首都圏は前年同月比+13.2%で3ヵ月ぶりの増加。月間契約率は76.6%で11.8ポイント上昇した。近畿圏は+4.8%、月間契約率は69.2%で9.6ポイント上昇。2016年通年の首都圏の新規発売戸数は-11.6%で3年連続の減少。2017年はやや増える見通し。1時台後半の日経平均は上昇して19100円に接近し、2時台に再びタッチするが安定的に乗せることはできず、19100円に売り買いのポジションが集中している模様。終盤は電池が切れたように19100円から徐々に下に離れて終了。今年初めて続伸したものの「猛反発」とまではいかなかった。

 東芝は原子力事業の損失が最大7000億円を超える可能性があり最終赤字が避けられず、上場廃止につながる債務超過の可能性も出てきた。自己資本を補うために日本政策投資銀行や三井住友銀行などに資本支援を要請すると報じられ15.9%安で値下がり率2位。エアバッグ大量リコール問題に苦しむタカタ<7312>は「有力スポンサー2社が法的整理を提案」というニュースが流れ、東証は前場いっぱい売買停止措置をとった。再開しても売り気配で値がつかずストップ安比例配分で終値17.3%安、値下がり率1位。東の芝にもタカタにも陽はまた昇るだろう、か?

 日経平均終値は177.88円高の19072.25円、TOPIX終値は+14.29の1528.15。売買高は22億株、売買代金は2兆2666億円。値上がり銘柄数は1546、値下がり銘柄数は364。プラスは30業種で、上位は海運、銀行、水産・農林、パルプ・紙、輸送用機器、非鉄金属など。マイナスは円安でデメリットが出る鉱業、石油・石炭とディフェンシブ系の小売の3業種。上海総合指数は0.38%安だった。

 20日の日経平均は3営業日続伸。ECB(欧州中央銀行)理事会は金融政策の現状維持を決定した。アメリカの新政権発足直前で動けない。量的金融緩和の国債等の買入額は3月末までは800億ユーロ、その後は600億ユーロで今年末に終了する予定だが、記者会見でドラギ総裁は「必要なら年末以降も量的緩和を続ける」と述べた。会見直後プラスだったヨーロッパ市場は、アメリカ大統領就任の様子見もあり終値では揃って小幅に下落した。

 要人発言に振り回された今週。この日の主役はムニューチン次期財務長官。上院公聴会で「長期的にみて強いドルは必要」と述べ、トランプ次期大統領のドル高懸念発言を「短期的な観点での発言だ」と説明した。発言直後から長期金利が上昇し為替はドル円115円60銭までドル高が進んだが、約2時間後には114円台に引き戻された。朝方の為替レートはドル円が114円台後半、ユーロ円が122円台前半。

 NYダウは午前中はプラスだったが午後に下げ幅を拡大して終値は72ドル安、5営業日続落。NASDAQ、S&P500もマイナス。就任前の様子見から逃れられない。原油先物価格は反発し終値51ドル台、金先物は続落した。12月の住宅着工件数は前月比+11.3%と好調。先行指数の建設許可件数は-0.2%だが、着工件数がマイナスの一戸建ては許可件数ではプラスで、さほど心配ではない。1月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数は23.6で市場予測を超える改善をみせた。大阪夜間取引終値は19040円。CME先物清算値は19045円だった。

 日経平均始値は13円安の19059円。高値は2時14分の19176円。安値は9時5分の19040円。終値は65円高の19137円。前日発表の12月の工作機械受注額確報値は前年同月比+4.4%で17ヵ月ぶりのプラス。為替の円安もあり自動車や半導体関連が堅調だったという。「大寒」の朝は格別の寒さで東京では雪が降る予報。しかし取引時間前に為替のドル円が円安方向に振れ115円にタッチ。日経平均もTOPIXも小幅安で始まるが、日経平均は19000円を割ることなくプラスに浮上し一時19100円台に乗せ、ぬくもり。9時に厚生労働省から11月の毎月勤労統計確報値が発表された。実質賃金の速報値は前年同月比-0.2%だったが、確報値は0.0%の横ばいに上方修正され11ヵ月連続でマイナスを回避した。現金給与総額は速報値は+0.2%から確報値は+0.5%に上方修正。所定内給与、所定外給与は速報値と同じだが、特別に支払われた給与が速報値の-3.4%から+2.0%へ大幅に上方修正された。通常国会の召集日。安倍内閣は午前の閣議で2017年度の国内総生産(GDP)成長率を実質+1.5%、名目+2.5%とする年度経済見通しを閣議決定した。内需を中心に景気回復を目指す。