過疎地域への定住推進策として活用されている、総務省の「地域おこし協力隊」制度。過疎地の自治体が都市部から若者を受け入れ、地域活動を1~3年間行なってもらい、その後の定住を促すという制度だ。しかし期間満了後の地域への定着率の低さ、定住のためのサポート不足など、様々な問題が持ち上がっている。
総務省が発表した「平成25年度地域おこし協力隊の定住状況等に係るアンケート結果」によると、任期終了後の隊員は、48%が活動地の市町村に定住している。しかし、この数字はあくまでも任期終了直後のものであり、長期間に渡る定着率には疑問が残る。また、募集要項に示された業務内容と実際に赴任した際の業務の齟齬も指摘されており、地域おこし協力隊の公式ブログ上ですら、不満を表明している隊員が散見される。こうしたことから、地域と人材とのマッチングの不備が懸念されている。
この原因は、地域おこし協力隊の受け入れ予算が総務省から全面的に支給されるため、地方自治体および実際に赴任する地域団体には、金銭面の負担が少ないことによるものだろう。隊員1人あたりの報償費として1年間あたり200~250万円、募集にかかる経費も200万円を上限に支給される。受け入れ側にとっては失敗時のリスクが少ない制度なのだ。
そのためか、安易な「お手伝い要員」として期待している節のある募集も散見される。業務内容が農作業の支援、高齢者の送迎業務、草刈り、といったものだ。
また、制度を特に必要としていない地域団体にも自治体が募集を推奨していた、という例が見受けられる。結果、観光振興や地元名産品のPRといった一見やりがいのある業務であっても、いざ赴任してみたら「必要ないので別の業務をして欲しい」と言われた、という体験談が報告されている。
もちろん十分な受け入れ体制を整えて、スキルある若者の移住を歓迎している自治体もある。地域おこし協力隊の期間満了後に地元で起業、就農、就職して、充実した生活を送っているという報告も多い。しかし、応募者と受け入れ側の意識の差や、マッチング不足によるトラブルが実際の声として上がっている以上、互いに慎重に精査して活用すべき制度だろう。(編集担当:久保田雄城)