記憶に新しいアスクル<2678>の物流センターの火災。個人向け通販商品の62%を埼玉県三芳町にある同所で取り扱っていたため、3月期の売上げはほぼ半減した。対して法人向け商品の取り扱いは9%だったため、こちらの減少は3.9%に留まった。
2月に起きたアスクル物流センターの火災が、個人向け通販商品の売上げに大きな影響を及ぼしていたことが判明した。同社が発表した2017年3月の月次業績によると、同月の個人向け通販「LOHACO」の売上高は前年同月比で53%となり、47%も減少した。また、4月現在も顧客からの注文受付時間を短縮するなど、サービスに影響が出ている。代替拠点の立ち上げを急いではいるが、今なお配送の遅延などが続いている状態だ。
一方、アスクルの主力事業である法人向け通販は、全国に点在する物流センターに在庫を分散させていたため、売上高は前年同月比で96.1%と、軽微な影響にとどまった。前年の同月は営業日が1日少なかったため、実質の売上高は100.8%となった。さらに火災が発生した後も前年を超える成長を続けており、順調な回復を示している。
しかし、法人向け事業の売上げ以外への影響は深刻だ。先に示した個人向け通販の売上げの半減に加えて、4月7日には、消防法違反容疑によって埼玉県警の家宅捜索を受けることとなった。火災が起きた物流センター内で保管していた可燃性の危険物の総量が、消防法において定められた限度を超過していた疑いによるものだ。火災の発生源は可燃性のスプレー缶への引火と見られているため、同社の信用をさらに低下させることとなった。
これら一連の出来事を反映して、同社の株価は火災の発生以降、低迷を続けている。火災発生の前日(2月15日)には終値3,630円だったところ、火災発生日(2月16日)には3,390円まで急落。さらに火災による特別損失101億円を計上した4月5日には2.992円まで値を下げて、4月12日現在も3,180円と低迷している。
情報化社会においては、企業に関するマイナス情報は瞬時にニュースやネットで駆け巡る。実際に受けた損害はもちろんのこと、これらの情報の拡散によるイメージの低下や、コンプライアンス違反とみなされた際の顧客離れなどの影響も大きい。企業はこれらの信用リスクにも、重々注意して対策しておく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)