半導体に集積密度が2年ごとに2倍になるというムーアの法則に沿って、50年前からチップの小型化、高性能化が進んできたが近年ではこれが鈍化してきていることがわかっている。一方で、AIの性能向上を加速させるうえで、かつてないほどチップの処理能力が重要なものになっており、技術的なブレークスルーが求められてきた。
半導体の集積密度が2年ごとに2倍になるというムーアの法則に沿って、50年前からチップの小型化、高性能化が進んできたが近年ではこれが鈍化してきていることがわかっている。一方で、AIの性能向上を加速させるうえで、かつてないほどチップの処理能力が重要なものになっており、技術的なブレークスルーが求められてきた。ここにきて、エヌビディアを始め各半導体メーカーが、チップの小型化に依らない処理能力の向上を実現する製品や技術を次々と発表している。
エヌビディアは5月に開催された技術カンファレンス「GTC」にて、次世代フラグシップとなるVolta GPUを発表。科学技術用のVolta GPUチップ「GV100」コアは、1年前のモデルと比較してディープラーニングの学習性能が12倍向上している。また、インテルが、5月に開催の技術カンファレンス「Computex 2017」にて発表した「Corei9」は、同社の現行最上位モデルの1.8倍の処理能力となる。さらには、IBM、サムスンなどからなるコンソーシアムは、6月開催の半導体技術と回路に関する国際会議「VLSIシンポジウム」にて、現行世代の線幅10ナノメートルの1/2となる5ナノメートルのチップを発表。IBMが10年以上かけて研究してきた新技術により開発される同チップの実用化により、10ナノチップに比べ40%の性能向上と75%の省電力化が見込めるとのこと。
従来のプロセッサとは別のアプローチで演算処理を行う技術にも注目が集まっている。IBMは脳の処理を模したコンピュータ・アーキテクチャ「ニューロシナプティック・チップ」の開発を進めている。同コンピュータ・アーキテクチャは低電力で高い計算能力を有し、コンピュータ産業に革命をもたらす可能性を持つ。また、同じくIBMは5月に、量子演算回路による並列計算を実行する「汎用量子コンピューティング・プロセッサ」の構築を発表。将来的には50個以上の量子ビットを搭載し、従来型コンピュータより大幅に高いコンピューティング能力の実現を目指す。
AIの性能向上はコンピューティング能力の向上によって実現する。チップ処理能力の限界により行き詰まったかのように見えたコンピューティング能力は、新たな技術が開発されることで、さらに加速する可能性がある。(編集担当:久保田雄城)