長年にわたり実店舗での価格比較行動の恩恵を受けてきたアマゾンが、これを阻止することが可能な技術で特許を取得した。近年、キャッシュレスコンビニエンスストア「アマゾンGo」やリアル書店「アマゾンブックス」など実店舗の展開を見せる同社だが、ネット通販の規模に比べるとまだまだ大きなものとは言い難い。価格比較行動の阻止の先にあるものとはどんなものだろうか。
業績の低迷が続く家電業界を尻目にアマゾンは、低価格を訴求し売り上げを順調に伸ばし続けている。4月にデロイトトーマツコンサルティングが発表した世界の小売業ランキングでは初のトップ10入りを果たし、日本法人のアマゾンジャパンも2016年の売上高が前期比17.5%増の1兆1660億7600万円と、首位のヤマダ電機(1兆6127億3500万円)に迫る勢いとなっている。小売モデルの中心が実店舗からネット通販へと移行しつつあり、このため大手家電量販店もこぞってネット通販には力を入れている。実店舗を持ち店員を配置することは、価格競争において不利なだけでなく、より安い商品をネット通販で購入するための「ショールーミング」に貢献するだけとの見方もある。マーケティングテクノロジー提供の仏Criteo S.A.が16年6月に実施した調査では、ショールーミング経験者は8割以上。実店舗で商品を観てスマホで即座に値段を確認する人が7割以上との結果となっている。
世界的に進む家電量販店のショールーム化だが、これにより利益を得ているアマゾンが価格比較行動の阻止する可能性のある技術を開発したことには、同社が展開する実店舗での顧客流出を防ぐこと以上の意味がある。特許取得の技術では、実店舗内のWi-Fiネットワークにて、価格比較に関連すると思われる検索クエリを検知した際に、それに対してさまざまなアクションをとることができる。検索をブロックすることも可能だが、それ以外にも対抗価格の提示やクーポンの表示などのアクションもとれる。顧客の位置や購買行動の把握といったことも可能になるため、従業員への対応の促しやプッシュ通知による案内といったアクションもとれる。こうしたアクションにより今後展開を拡げる実店舗での対応を充実させる狙いがあるとみられる。また、これ以上に他社に先行してこうした技術を開発することでのメリットが大きいと考えられる。(編集担当:久保田雄城)