スペースXが3月30日にリサイクルロケットの打ち上げ・回収を成功させた。イーロン・マスク氏率いる同社が、リサイクルロケットにこだわった開発を進め、通信衛星を軌道乗せるまでには実に15年の歳月を要している。マスク氏の最終目標は火星への移住だが、今回の打ち上げは、商用宇宙旅行の実現に向けての大きな一歩となる。また、ロケットのリサイクルによるコストメリットも大きく、同社の宇宙開発技術が競合に先んじていることが示された。
今回打ち上げた「ファルコン9」の1段目ロケットには、昨年4月に打ち上げて回収したものが再利用されている。スペースXの長期的目標は、ロケットを24時間以内に完璧に整備することで、これが実現すればロケットを発射して回収し、再発射するのに1日しかかからない。マスク氏がロケットの再利用にこだわる理由は、莫大なロケット打ち上げコストの削減。1段目ロケットの費用は約3000万ドルで、打ち上げコストの中で最も大きな割合を占めるという。今回の打ち上げで取られた、一度利用したブースターを修理して再利用する手法では、従来の新しいブースターを使う手法と比較してコストが半分未満だったとのこと。
ただし、スペースXの手法が最良のものとは考えず、別の手法によってリサイクルロケットを開発する企業も出てきている。米国防総省とNASAに打ち上げサービスを提供するユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の開発する手法では、発射第一段階で用いる全部品を再利用するのではなく、自社製バルカン・ロケットの両側に取り付けたブースター・エンジンのみを回収する。ULAによればこの手法が実現すれば、よりコスト削減が図れるという。また、アマゾンのジェフ・ベゾス氏が率いるブルーオリジンもリサイクルロケットの開発を進めていて、同社はスペースXと同じ手法を取っている。
以前は常軌を逸したアイデアと捉えられていたロケットリサイクルだが、ここにきて各社が開発を競い合っている状況だ。スペースXは、2018年後半には、すでに手付金を支払った民間人2人による月の周回旅行を計画しており、今後の商用宇宙開発の進展に注目したい。(編集担当:久保田雄城)