自動車産業を悩ますリコール問題。優秀な部品サプライヤーへの注目高まる

2017年08月20日 15:29

ローム0816

ロームは7月12日、コンチネンタルAG 社が主催する2016年度のサプライヤー表彰式の汎用LSI、個別半導体部門において、3年連続で「サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。

自動車産業に特化した研究調査会社、株式会社FOURIN (フォーイン)が発行している「世界自動車統計年刊 2016」によると、世界の自動車市場は6年連続で拡大成長を続けており、2015年は1.7%増と微増ながら8947万台まで拡大、9000万台市場も目前と見ている。

 資源の乏しい輸出立国である日本にとって、自動車関連産業は日本を支える基幹産業だ。経済面だけでなく雇用面でも、日本の全就業者数約6300万人の9%近くを占める550万人程度が自動車関連産業に従事しており、まさに日本を支える屋台骨ともいえる。トヨタ 、日産 、ホンダ などの大手メーカーのみならず、ブリジストン や小糸製作所 などの自動車部品サプライヤーも世界の市場で存在感を示している。

 そんな日本にとって、自動車業界の成長は喜ばしいことであるのは間違いないが、販売台数が伸びるにつれ、別の大きな経営課題も持ち上がっている。それが、近年度重なって発生しているリコール問題だ。日本メーカーでも、2009年から10年にかけて北米や日本などでトヨタ自動車が行った大規模リコールなどが記憶に新しいが、自動車部品の高度化や仕様の多様化など、急速な技術の進歩に伴って、ここ十年ほどの間に世界規模で大量リコールが発生しているのだ。また、リコールまでには至らなくても、個別の不具合に対応する無償修理や交換などのワランティ(製品保証)の支出も、年間数千億円規模に及ぶ自動車メーカーも少なくないとみられ、看過できない。自動車関連企業にとって、販売台数を伸ばすことももちろん重要だが、リコールやワランティの負担を削減することは、収益性の改善という意味でも火急の課題となっているのだ。

 リコールやワランティを削減するために必要なことは、まずは自動車部品サプライヤーの品質向上や製造プロセス、生産体制の改善だ。今後益々、製造者責任に対する意識向上が求められることになるだろう。自社を守るためにも、部品サプライヤーに対する自動車メーカーからの監査の目が厳しくなり、評価のハードルも高くなるのは間違いない。

 例えば、ドイツ・ハノーファーに本社を置く世界最大のタイヤ及び自動車部品メーカー・コンチネンタルAG 社は、早くからサプライヤーの評価を重要視してきた企業の一つだ。同社は2016年度、グループ全体で世界2700 社以上のサプライヤーから、約100 拠点の工場に約1200 億個の部品を購入しているが、その中から同社の定める一定基準を満たした900 社以上の戦略的サプライヤーに対して、品質や技術、物流、コストなどあらゆる面で総合的に評価を行い、優秀サプライヤーを表彰している。

 2016 年度は15 社が優秀サプライヤーに選ばれ、日本企業ではロームが汎用LSI、個別半導体部門において3年連続で「サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。

 我々消費者はどうしても、最終商品を提供しているメーカーにばかり注目してしまいがちだが、一台の自動車は3万点近くにものぼる部品の集合体だ。その部品を提供しているのがサプライヤーであるならば、優秀な自動車メーカーとは、優秀な自動車サプライヤーの集合体と言ってしまっても過言ではないだろう。自動車部品の信頼性において、日本製品は世界的にも評価が高い。日本の将来のためにも、自動車部品サプライヤーの今後の躍進に期待したいところだ。(編集担当:藤原伊織)