2016年度の自動車小売業の倒産は前年度比29.4%増の110件

2017年05月19日 07:13

 2016年度は自動車業界において多くのニュースが飛び交った1年となった。三菱自動車工業とスズキの相次ぐ燃費不正問題により一部車種が販売停止を余儀なくされたほか、タカタによるエアバッグ問題が発覚し、大量リコールも発生した。このほかにも、米フォードが日本の自動車市場縮小などを理由に日本事業から撤退するなど、国内の自動車販売市場が変化した1年でもあった。こうした市場変化の影響は、消費者と直接向き合う小売業各社も同様に受けやすく、経営環境の変化に耐えられなくなった自動車関連小売業の倒産が懸念される。

 これを受けて、帝国データバンクでは、2000~2016 年度(17年間)の「自動車小売業」の倒産動向(法的整理を対象)について分析した。

 2016年度の自動車小売業(新車・中古車)の倒産(法的整理)は110件(前年度比29.4%)となり、2年ぶりに前年度を上回った。負債総額は133 億8200 万円(同 68.1%増)となり、2年連続で前年度比増加となった。

 業態別にみると、2016年度の新車小売業の倒産は13件(同 18.8%減)となり、2年連続で前年度を下回ったほか、2000 年以降の17年間で最少を更新した。一方、中古自動車小売業の倒産は97件(同40.6%増)となり、5年ぶりに前年度を上回った。負債総額は約 71億4400万円(同 20.1%増)となり、3年連続で前年度比増加となった。

中古自動車業界は、2011年に発生した東日本大震災による被災地需要や従前より海外での中古車輸出などが好調だったこともあり、倒産件数は減少傾向となっていた。しかし、海外では資源価格下落などの影響による輸出先の景気と需要が低迷。国内でも 2015年に軽自動車税が引き上げられたほか、燃費不正問題にともなう軽自動車の一部車種で販売停止措置が取られたことで登録台数が減少。加えて、過年度の新車市場の低迷で中古車買取台数が減少傾向にあったことや輸出の増加などで中古車の供給量が減少し「商品車両不足」の状態となっている。そうしたなかで、在庫確保などを目的に利幅の薄い買取競争が加熱するなど、業者間での競争が激化し収益を圧迫しつつあることが、中古自動車小売業の倒産が増加している背景と考えられるとしている。

 タイヤやホイールなどの販売などを行う自動車部品・付属品小売業の 2016 年度の倒産は23件(前年度比109.1%増)となり、3年ぶりの増加となった。負債総額は20億8700 万円(同39.6%減)となり、2年ぶりの減少となっている。自動車部品は自動車販売の低迷にともない、若者を中心としたカスタマイズパーツ需要も減少するなか、近時ではメーカー純正パーツの人気が高いほか、同業他社やホームセンターなど異業種との競合による価格競争がし烈となっている。加えて、タイヤなどのカーケア用品についてはインターネットを通じた販売も普及しており、こうした市場環境の変化も一因となって収益が悪化し、倒産に至るケースが散見された。(編集担当:慶尾六郎)