仮想通貨の流出事件を受けて保険会社の中には盗難保険を策定する動きが出てきた。それだけ仮想通貨に対する認知度があがってきたとみることもできるが、具体的な保険の内容についてはまだまだ検討段階のところも少なくない。
仮想通貨は投資目的で利用するという人も少なくないが、その反面補償についてはそこまで考えている人は多くはないといわれている。投資である以上は結果的に損失になってしまうことはある意味当然といえば当然のことであり、預金した分が盗まれてしまうなどということは想定している人のほうが少数だからだ。そんな前提が大きく揺らいでいるのは、先般起こった仮想通貨の流出事件である。
取引会社から仮想通貨が流出した事件を受けて、世界各国の保険会社では仮想通貨の盗難に対応できる保険についての検討を始めている。日本国内でも、仮想通貨に対しては三井住友海上火災保険や東京海上日動火災保険などで保険が取り扱われている。ただし、こうした保険会社の取り扱う仮想通貨保険は加盟店を対象とした保険であり今回の流出事件で盗難に遭った分についての個人補償は想定されていない。他の保険会社としても、こうした仮想通貨についての取扱に関する条項は設定されていない場合が多いという。
仮想通貨についてはまだまだ不確実な部分も多く、それだけに保険の提供についても困難を伴う。保険会社が保険料を含めた商品の設計をする場合、保険の対象となるものに対してある程度のデータの蓄積や過去の実績などが重要となる。しかし、仮想通貨の場合はこうしたデータの蓄積などがまだ乏しく、想定される補償内容についても不透明な部分が多い。そのうえ、これまでにない新しい技術が仮想通貨には使われていることから、こうした部分についての知識や理解が乏しいという点も保険会社にとっての大きな課題となっている。
とはいえ、もしも仮想通貨における保険が適切な形で提供されれば、それは保険会社にとっては大きなビジネスチャンスとなることは言うまでもない。いわば他社に先んじた商品が用意できるということになるため、保険商品としての価値が高いことになるためだ。また、こうした保険会社の動きはそれだけ仮想通貨というカテゴリーに対する認知度が高まってきたことの証左ともいえる。
実際のところ、仮想通貨の保険に対する取り扱いについては各保険会社ごとに温度差があるのが現状である。仮想通貨の普及についてはまだ時間がかかるとみられているとともに、その価格が不安定であるという点も課題となっている。保険会社が設定する保険料は保証対象となる商品の価値がひとつの基準となるものの、その価値が一定ではないという点が保険会社にとってのハードルを高めている。そのため、仮想通貨の保険については今後も各保険会社ごとに検討が続けられていくとみられている。(編集担当:久保田雄城)