スマートハウスに不可欠なものとして知られる「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」。今後も進化し続けるであろう、このシステムはいったいどのようなものなのであろうか。
「スマートハウス元年」と呼ばれた2011年。その代表的なモデルが、昨年8月に積水ハウスが市場に投入した「グリーンファースト ハイブリッド」だ。世界初の3電池(太陽電池・燃料電池・蓄電池)を搭載した住宅商品で、同社オリジナルの「HEMS」を搭載し、3電池の連動制御を実現している。そしてそれ以降、後を追うように、いわゆる”スマートハウス仕様”の住宅は各ハウスメーカーより市場に投入され、普及へと向かって走り出している。
そのスマートハウスにおいて電力を制御し、効率的なエネルギーマネジメントを行うためのシステムが「HEMS」なのだが、市場では”電力の見える化”の機能だけしか備えていないものも少なくない。このタイプは、家庭内に設置されたシステム機器であるモニターに消費電力の単位などを表示し、住まい手自身に節電を即すことが主な役割であり、電力を制御することはできないものが多い。
しかし、「HEMS」の本来の機能は、家庭内で利用するエネルギーのマネジメントである。深夜電力充電などを行うコントロール機能によってコストメリットを出したり、非常時給電システムと組み合わせて、停電時の電力供給を行ったりすることができるのが「HEMS」。普及しつつあるスマートハウスには、”電力の見える化”だけでなく、これらの機能が不可欠だ。
だが、「HEMS」の進化はこれで終わりではない。次世代電力メーターである「スマートメーター」と連携し、”スマートグリッド”や”スマートタウン”へ発展していくという未来の低炭素社会を目指すためには、更なる進化が必要だ。
その進化した「HEMS」とは、全てのメーカーの電気製品までもコントロールし、家庭内の電力を最適な状態に制御することだ。現在、その実現に向け、政府、関連企業・団体の動きが活発化しようとしている。
昨年7月に立ち上がった「HEMSアライアンス」は、その市場確立と普及を目的とし、東芝、NEC、パナソニック、日立製作所、三菱電機、シャープ、ダイキン工業、KDDI、三菱自動車、東京電力の10社が参加している。この共同検討体制が進めるプロジェクトの中でも一番注目されるのは、他メーカー間の機器で「HEMS」を作動させるための枠組みやガイドラインの策定だ。3年以内に何らかの成果を残したいとする同団体の動きは注目だ。
一方、経済産業省は官民合同でスマートハウスの普及を目指し、そのために必要な「HEMS」と家庭用機器とのインターフェイス標準化や「スマートメーター」導入加速化を検討するために「スマートハウス標準化検討会」を設置した。検討会の中には、積水ハウスや大和ハウスなどの大手住宅メーカーやトヨタ、日産などの自動車メーカーら11社から構成された「HEMSタスクフォース」と東京電力などの電力メーカー、東京ガス、大手家電メーカーら14社で構成された「スマートメータータスクフォース」が置かれ、それぞれの機器の視点で随時会合を行い、導入普及のための体制を検討している。
既に、その成果として昨年の12月16日に『エコーネットコンソーシアム』が開発した「エコーネットライト」を「HEMS」の標準インターフェイスとして採用することが経済産業省より発表された。また、同月21日には一般公開もされており、誰でも「HEMS」関連の事業に携われるようにもなった。
様々な関連団体が入り交り、分かりにくい部分があるのも確かだが、いずれにしても今年は「HEMS」の進化と、関連するエネルギーシステムや機器の動向から目が離せなくなりそうだ。