総務省の2017年9月時点での推計によれば総人口に占める高齢者、つまり65歳以上の人口の割合は27.7%と過去最高を記録した。かねてより予測されていた超高齢化社会は今、現実のものへとなりつつある。
超高齢化は年金や医療をはじめとする社会保障制度の維持に深刻な困難さをもたらすとともに、既にそうであるように労働力の供給不足によって経済の稼働率を低下させる要因でもある。医療技術の進歩もあり現代の定年後の世代は昔と比べ体力・気力ともに元気だ。即戦力となる労働力として定年後世代への期待は大きい。
7月5日、内閣府が「政策課題分析シリーズ」の第16回として「60代の労働供給はどのように決まるのか?-公的年金・定年制度の影響を中心に」をレポートとしてまとめ、これを公表した。
レポートによれば、厚労省が2005~15年に実施した「中高年者縦断調査」のデータにもとづいて60 代の就業状況を分析した結果、55歳以上男性の就業状況は55歳時点でフルタイム就業が9割を超えているが、69 歳では 1 割強にまで減少している。60歳でのフルタイム就業の割合を10年と15年で比較すると、10年では64%であったものが15年では76%と12ポイントも増加しており、60代前半のフルタイム就業比率の上昇が目立っている。
60代以降もフルタイム就労した労働者は一気に退職するわけではない。60代後半になるとパートタイムや失業の割合が高まって、徐々に労働時間を減らしたり、 就業状態を切り替えたりして行き、最終的に労働市場から退出する傾向がうかがえる。
定年後も就業を続ける人は多くなっているが、定年退職というイベントが就業状態を切り替える一つの契機となっている、とレポートでは分析している。レポートではさらに計量モデルを用い60代の就業形態や就業時間に定年制度や年金制度が与える影響について分析している。
分析結果では、定年制度が労働時間を短縮するトリガーとなってきたが、再雇用や勤務延長などの制度が整備されることで、その影響が緩和されている、としている。年金支給の影響については、60代前半では在職老齢年金制度によりフルタイム就業意欲が一定程度阻害されているが、65歳以上ではその影響は小さい可能性が示唆されているものの確定的ではない。
レポートは最後に「60代の活躍は年金の制度設計や企業の人事制度の改革がカギ」と結んでいる。(編集担当:久保田雄城)