「未病」リスクが高まる中、「未病」という概念を広めることで、人々の行動変容を促し、心身の状態を最適化する「未病を改善する」商品やサービスを供給する「未病産業」の創出による持続可能な社会システムの提唱が推進されている。
「未病」をキーワードに、誰もが健康で長生きできる社会の創出、健康への関心向上を目指し独自の取り組みを行っている自治体がある。神奈川県は、全国でも一、二を争うスピードで高齢化が進行しているなかで、超高齢社会の到来に備え、「未病の改善」と「最先端医療・最新技術の追求」という2つのアプローチを融合する「ヘルスケア・ニューフロンティア」の取組みを、全国に先立ち推進している。
漢方などで古くからある「未病」という概念は、病気と言うほどではないけれど健康とは言えない状態を指し、具体的には軽度の糖尿病や高血圧、早期のがんなどがこれに含まれる。「未病」の段階では、 様々な兆候はあるものの、検査をしても異常が無く、 取り立てて日常生活には支障がないので、危機感を抱いている人は少なくつい無理を続けてしまいがちだ。
「未病」の改善に取り組む養命酒製造は、サラリーマンの未病実態に関しての調査を行い、30代以降のビジネスマンの70%以上が一定の不調を訴え「未病」状態であることがわかった。主な症状としては「疲れがとれない」「疲れやすい」 「体がだるい」などだ。さらに本調査では、「未病」リスクについて、年代別での違いは顕著に見られなかった。年代問わず働き盛り世代の大半が病気に向かいつつあるなかで、健康促進やその為の意識改革に対する重要性は日増しに高まっている。「ヘルスケア・ニューフロンティア」は、働き方改革に直結した問題ともいえる。
神奈川県では、「未病の改善」のため、県民にとどまらず日本国民全体のライフスタイルを見直す活動を基本として、健康の「見える化」を進め、企業や大学、研究機関など多様な主体が連携して環境整備を進めていくことを目指す、いわば新たな社会システムの創出という大規模な取組みを行っている。これにより、県民(国民)は「最先端医療の享受」や「将来への安心」などのメリットが得られ、企業は「ビジネスチャンス拡大」「世界市場への進出」「企業価値の向上」、行政は「行政サービスの拡充」「医療の最適化」「臨床研究機能の強化」など相互の利益享受が期待される。
「未病」という概念を広めることで、人々の行動変容を促し、心身の状態を最適化する「未病を改善する」商品やサービスを供給する「未病産業」を創出するとともに、産業創出に向けて障壁となっている規制の改革等、先行事例として課題解決に向けた動向に注目が集まっている。
超高齢化社会到来は待ったなし。いまだかつて無い大波への事前準備が急務である中、行政・企業・医療・国民などの枠組みを超えた国民全体の意識改革を行うきっかけとして、持続可能な社会システムの提唱、実践の意義は大きいといえるだろう。(編集担当:久保田雄城)