今やペットは家族の一員という存在。住まいの中で、そのペット達の居場所をどのように作ってあげられるかが、お互いの快適な暮らしに繋がると言っても過言ではない。
伸び率は多少鈍化したとは言え、相変わらず右肩上がりの成長を続けるペット関連市場。ペット販売・ペットフード販売・ペット用品販売だけではなく、人と同じように衣・食・住・サービス産業でも、このビジネスは拡大している。その背景として、ペット産業を引っ張る「犬」に多い”室内飼育”や”コンパニオンアニマル”などのキーワードに関連するビジネスの堅調さがある。
伴侶動物とも表現されるコンパニオンアニマルだが、飼い主が家族として扱う現代のペットの立場から”室内飼い”というスタイルが増加している。その伴侶のためにリフォームをしたり、新居を建てる際に設計段階から考慮するオーナーも決して少なくない。
そういった”コンパニオンアニマル”としての傾向は、多くの関連ビジネスが存在することからも分かる。
例えば「ペットタクシー」。こちらは動物病院やターミナルまでの送迎を行う専用のタクシーで、飼い主の同乗が可能だ。このような移動手段の登場で、ペット同伴で泊まれる宿を紹介するサイトや情報誌もますます人気だ。リクルートの「じゃらんnet」や楽天の「楽天トラベル」はコンテンツを常設しており、その人気ぶりが伺える。
さて、肝心の住まいに関してだが、大手住宅メーカーもペットと暮らす家の提案には積極的な傾向が見られる。中でも積水ハウスは、ペット市場に展開する新しいビジネススタイルを導入したことで注目を集めている
その注目スポットが、お台場『ヴィーナスフォート』に、2010年3月にオープンした「ディア・ワン PECOSお台場店」。全国展開するイオン系列の「ペットシティ」のフラッグシップ店舗の位置付けとなる「PECOS」とコラボレーションした”ペットと快適に暮らす住空間体験ショップ”で、飼い主側とハウスメーカー側の橋渡し的存在のアンテナショップだ。
「ペットシティPECOSお台場店」には仔犬・子猫販売、グッズ販売の他、トリミングやしつけ学校、動物病院がインショップとしてあり、「ディア・ワン PECOSお台場店」も含めて、衣・食・住・サービスとペットに関する様々なビジネスが複合体として機能している。ここに訪れる人達はペット(犬・猫)に関するあらゆる施設を利用できることになる。
実際の役割として同店では、ペットが滑りにくい床「ファブリックフロア」や散歩帰りの足洗い場、ペットのシャンプー台になる多目的シンクなどを施工例と共に紹介したり、ペット共生住宅研究のノウハウを持つ専門スタッフによる相談や提案を行ったり、他にもユーザーのニーズに合わせて市販のドッグハウスや他のペット用アイテムを紹介するなど、言わばオーナーに疑似体験をさせるペット共生住宅のコンサルティング的立場になっている。また、一方では、会員登録をしたユーザー向けに、フォトコンテストなどペットに関する様々なイベントを開催し、会員とのコミュニケーションづくりにも積極的で、オーナー予備軍との繋がりも大切にしている。
このように、ペット共生住宅に対する飼い主の考え方はますます一般化され、人とペットの快適な暮らし方の幅は確実に広がっている。だが、その一方では外出時の留守番ができない”犬”なども多く、飼い主の悩みのタネともなっている。そんな時に必要となってくるのが「居場所づくり」だ。留守に吠え続けて近所からクレームが来るなんていうのは、現代社会の騒音公害の観点から見ると当たり前になってしまう。犬にもひとりで、ゆっくりくつろぐ場所を与えてあげることで、徐々にその環境にも慣れ、やがて留守番もできるようになるというのだから、適切なしつけとともにそういった居場所を作ってあげることも大切だ。
もちろん、犬種によっては必要なかったり、四六時中一緒にいることをお互いが望むケースもあるだろう。だが、コンパニオンアニマルが増え、高齢者の飼い主も多くなる中、住空間の環境整備はまず、飼い主が最初に考えなければならないことだ。加えて、ペット人口の増大により、ペットの食・衣類・グッズだけではなく、ヘルス・ホテル、はては教育、保険、葬祭まで、多くの企業が競って市場に参入している。それだけペット関連商品は、ユーザーから見れば、「情報過多」の時代に既に入ったとも言えるだろう。ペットだけにフォーカスするあまり、住環境がオーナーにとって決して快適ではないケースもあるようだ。逆に、飼い主の手間が省けるだけでペットにとっては有難くない商品も存在する。同店でこだわっているのは、「大事なパートナーだからこそ、散歩や食事など日常動作がお互い快適になるような環境づくり」。そんな環境を配慮しながら、様々なケースをアドバイスしてくれる「ディア・ワン PECOSお台場店」のようなショールームは、今後さらに活躍の場を広げる可能性が高い。そして、その住環境に合ったペットの”居場所”を作り、家族として一緒に過ごす、バランスの取れたライフスタイルを提案することが、市場を活性化させることにも繋がっていくようにも思える。