IT投資計画、大・中堅企業を中心に積極的。背景に人手不足と働き方改革

2018年08月19日 12:14

 景気回復が続く中、企業の設備投資意欲は旺盛なようだ。財務省の法人企業統計をみても、設備投資の内IT関連の投資に積極さがうかがえる。

 人口減少の中、設備投資は事業拡大投資よりは更新投資に重点を置いているようだが、本年度の更新型IT投資の増加の背景にはwindows10への移行が一つの要因であると言われている。しかし、それだけでもなさそうだ。人手不足が深刻化する中、業務効率化のためのIT投資も増加し始めたらしい。

 今月9日、IDC Japanが「IT投資動向に関する国内CIO調査」の結果を公表した。この調査は国内企業のCIO(IT担当役員)や情報システム部門の長などを対象としてIT投資動向について調査したものだ。

 2018年度のIT支出計画について、前年度と比較して「変わらない」と回答した企業は6割を超えている。しかし、従業員1000人以上の大企業と100人以上1000人未満の中堅企業のみでみると「変わらない」は半数以下になり、大企業で「増加」との回答が39%、中堅企業では25%で両者ともに「減少」を上回っている。

 レポートでは、労働人口の減少や人材不足を背景として、大企業、中堅企業を中心にITを積極的に活用することで業務の効率化や働き方改革に取り組む動きが強まっていると分析している。

 産業分野別にみると、通信・メディアと金融でIT予算の拡大傾向が強くなっている。銀行ではフィンテック導入に向けてリストラ中だ。政府・公共では「増加」が「減少」を上回っているものの「減少」の割合が3割近くに達し、IT予算を拡大する部署と縮小する部署で二極化している。

 投資分野をみると大企業ではパブリッククラウドサービスや外部データセンターサービスが3割を超えていて、これはAIやビッグデータを意識した戦略的投資とも考えられる。実際、大企業では「IT投資対効果の可視化」や「IT戦略策定・企画力の向上」を課題とする企業が多くなっており、外部パートナーのサービスを利用する傾向が強くなっているようだ。

 今後はクラウドを中心とした第3のプラットフォーム向けITサービス支出が市場全体の成長を牽引するとみられる。しかし、プロジェクトは業務部門が主導するようになり既存システムとの連携が十分に考慮されないケースが増えて行く。この為第2のプラットフォーム向けのITサービス支出が減少しITサービス市場全体の成長率は徐々に低下していくのではないかとレポートは分析している。(編集担当:久保田雄城)