現在、AIやIoT、ビッグデータなど新たな情報革命が進展している。日本のITは以前より10年以上の遅れをとっていると言われ、このまま行けば産業崩壊を起こすであろうとまで言われてきた。今回のIT革命に乗り遅れれば日本産業の未来は無いと言って良いであろう。日本産業におけるIT資本蓄積が急務であることは今更言うまでも無い。
2017年6月の日本政策投資銀行「設備投資計画調査」によれば、日本産業の設備投資の動向は全産業で11.2%と6年続けての大幅な増加になっている。報告書では「企業行動に関する意識調査」の中で「AIやIoTの活用による生産性向上が足元では低い一方、5年先で高くなった」と結論づけている。
増加傾向にある設備投資の中でIT投資も微増傾向ながら堅調に推移し続けてきた。この主要因はマイナンバー制度の導入や東日本大震災などに関連してセキュリティー強化のためのものである。
セキュリティー対策を目的としたIT投資は当初、企業調査から2016年度中にピークアウトし、その後減少に反転するであろうと見られてきた。しかし、ITRの2016年10月のレポートをみると、2016年度におけるIT投資計画は「前年度より大幅に増額」が28.5%と前年度を大きく上回った。
同レポートの17年度については前年度に比べ減少傾向の企業が増加しているものの、13年以来の高い水準を維持しており、決して低い水準に落ち込むものではない。レポートでは「09年以降では最高の水準であり、ITへの積極的な投資は持続するとみられる」と結論づけている。
日本政策投資銀行の分析では企業が積極的にIT投資を行う背景として「人材不足対応」を挙げている。生産年齢人口の減少に伴い、労働市場は年々人手不足感に悩まされるであろう。しかも、現在の人手不足感は、ITを典型とする急激な業務環境の変化により、高度な人材の需要を増大させている。政策投資銀行のレポートにおいても「人的投資では今後、育成が重要となる人材として、製造業では国際人材、非製造業では営業等の専門人材」を企業が求めているとしている。
従前、IT投資は人材不足を解消する作業効率型が主要であった。しかし今後は高度人材に代替する戦略的なIT投資へとシフトして行くものと考えられる。このIT投資が成功するか否かに日本産業の競争力、日本経済の未来がかかっていると言えるであろう。(編集担当:久保田雄城)