ロームが主催するアイデアコンテスト「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」の最優秀賞作品は、IT 技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN」のロームブースで展示される。写真は昨年の展示の様子。
「理科離れ」という言葉が日本の教育界で使われ始めたのは、1980年代の後半ごろ。その頃に生まれた赤ちゃんも、もうすっかり親の世代。日本人の「理科離れ」は本当に進んでいるのだろうか。
7月31日に文部科学省が公表した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のアンケート結果によると、「理科の勉強は好きですか」という質問に対し、小学生の80%以上が肯定的な回答をしているものの、中学生では60%程度に留まった。また「理科の授業で学習したことは将来、社会に出たときに役に立つと思いますか」との質問には中学生の40%以上が否定的な回答を残している。数字だけを見ると、やはり子どもの理科離れが心配されるのも無理はない。しかし、理科離れが叫ばれ始めた30年前と比べると、学校をはじめ、様々な団体や企業が子どもたちの理科教育に積極的に力を注いでおり、子どもたちを取り巻く環境は飛躍的に改善している。
また、近年の科学技術の進化によって、科学に対する垣根は低くなった。とくに最近は、最新のオープンイノベーションを駆使した、最先端の電子工作のコンテストやハッカソンが行われるようになり、大きな盛り上がりを見せている。
その中でも代表的なのは、株式会社ピーバンドットコムが主催する「GUGEN(グゲン)」や、日本最大級の開発コンテストとして知られる「Mashup Awards」だろう。
これまで、電子工作のようなものづくりは、大企業や大学、一部の技術者だけが行うのが常だった。しかし、インターネット環境の普及と充実によって、情報や知識の収集、共有はもちろん、物流や専門的な部品の調達も容易になった。その気になれば、最先端のデバイスがクリック一つで自宅の部屋に届くような時代だ。
GUGENやMashup Awardsでは、プロの技術者だけでなく学生や一般の参加者も多く、これまでの常識を覆すようなアイデア作品が集まっている。例えば、昨年のGUGENで大賞を受賞したのは、電動歯ブラシ。もちろん、ただの電動歯ブラシではなく「人生100年時代に必要な歯磨きシステム」。先端に搭載されたカメラから送信される映像をスマートフォンで確認しながら、歯を磨くことができるうえ、紫外線を当てることで歯垢を可視化。汚れているところを重点的に磨けるという代物だ。他にも、Goodアイデア賞を受賞した「MommyTummy」は、温水を腹部の水袋に徐々に注入することにより胎児の重さと温かさを呈示する妊婦体験システム。また、高校生が開発した電源コード不要のワイヤレス「蝶型ロボット」など、大賞以外の作品も、「未来」を具現化した、これまでにない楽しい作品ばかりだ。
また、GUGENやMashup Awardsは、多くの技術コンテストや企業とも連携して拡大している。例えば、京都の半導体・電子部品メーカー・ロームが主催する「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」もその一つだ。ロームは主力の車載・産業機器向け製品だけでなく、センサやマイコンボード、無線通信モジュールなどのIoTにも活用できる製品ラインアップも豊富だ。「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」は、その同社のデバイスを使用したプロトタイプ作品を募集するコンテストで、毎回100を超える作品が集まっている。今年もすでに一次審査が終わり、9月8日(土)にはいよいよ、東京 DMM.make AKIBAにて最終審査が行われる予定だ。人数制限はあるものの、特設WEBページからの予約で一般観覧もできるという。ここで最優秀賞を受賞した作品には、優勝賞金の他、10月に幕張メッセで開催されるアジア最大級の規模を誇るIT 技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN」のロームブースで展示され、さらにはMashup Awards2018のセカンドステージの進出権、GUGEN2018の展示会・受賞式への出展権が贈られる。
こういったコンテストやハッカソンがもっと認知され、一般の人や学生がどんどんと参加し、そこで生まれたアイデアやプロトタイプが世の中に便利や楽しさをもたらすことができれば、未来の子どもたちは放っておいても、もっともっと理科に興味を示すようになるのではないだろうか。「理科の授業で学習したことは将来、社会に出たときに役に立つと思いますか」という質問が愚問といわれる未来もくるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)