自由貿易体制は国際安全保障上最も重要な基礎である。東西冷戦終結後、ウルグアイ・ラウンドに代表される交渉の中で自由貿易体制は加速していった。その中で日本は、日本の農業だけは特別なものとして日本の農業の自由化に消極的な態度を取りつづけてきた。しかし、その裏で日本政府は着々と日本の農業競争力強化の政策を実施し、農協系生産者の比率が減少した現在、農業市場の自由化をむしろチャンスとして捉えるように代ってきた様相も見せている。
農林水産省は5日、「農業競争力強化支援法に基づく施行1年後調査」を公表している。調査結果によれば、飲食料の国内最終消費額の仕向け先の内訳は、日本では2011年の最終消費額76兆円のうち、外食が32.9%、加工品が50.7%で両者を合わせると83.6%が加工食品で、残り16.3%が生鮮食料品となっている。一方、米国では外食が49.8%と半数を占め、加工品が35.2%、生鮮品が15.0%となっている。生鮮品の部分については両国では大きな差は無いと言える。
食料品流通構造の違いを見ると、日本の食料品流通は、集荷・分荷、価格形成、代金決済等の機能を有する卸売市場が食品流通の核として 機能しており、食品小売が大規模化する中でも、卸売市場を介した取引が主流となっている。 一方、米国では大手食品小売が卸機能を内製化し、生産者を束ねる集出荷業者と直接取引する形態 が主流で、卸売業者は主に外食業者や地元小売業者への流通を担うシステムになっている。
こうした従来のシステムに対して、日米ともに、食料品流通の全国的統合が進む一方で小規模生産者有機農産物など多様な消費者ニーズにも対応するためファーマーズマーケットや生鮮食料品分野でのインターネット通販など多様な販売チャネルの構築に向けた取り組みも行われている。
日本のスーパー等の上位5社の占めるシェアは、欧米諸国に比べて低く。食品小売の事業所数は食料品専門店や食料品中心店が減少し、コンビニやドラッグストアが増加し、依然厳しい競争状態にあると言える。米国のスーパー等では大規模化されており、14年以降はネット販売の拡大、ICT物流システムによる販売・在庫データ管理等、情報通信技術を活用した再編が加速している。
業態別の販売シェアをみると、日本ではスーパーが27%、コンビニが21%で米国ではスーパーが65%を占めており、両国では小売側と生産者側の交渉優位性は違うであろう。こうした国による事情を考慮しながらも最適で効率的な流通システムを構築することが農業競争力の強化へとつながるのではないか。(編集担当:久保田雄城)