商売をしていくうえで欠かせないのが「価格設定」だ。価格設定が高すぎれば顧客は離れていき、低すぎれば利益が出ない。価格設定がマーケティングの中でもっとも重要なポイントの一つであるということに異論はないだろう。今まで市場調査などをもとに人が決めていた商品の価格を、AIが決めるようになってきている。
これまで価格設定はベテランの担当者などの経験や勘によって設定されてきた。特にスーパーマーケットやドラッグストア、デパートなどは集客効果を狙ってキャンペーンを打ったり、多少損失が出ても安売りをしたりして顧客に足を運んでもらうことで結果的に利益を得る手法を取ってきた。数多くの商品を取り扱う店舗では、一つ一つの商品の最適の価格設定を行うのは簡単ではなく、担当者が季節や客足などを考慮して決定するのが精いっぱいだったのだ。この方法でもある程度の利益を上げることができ、大きな問題が起きているというわけではない。
しかしそんな状況が劇的に変わろうとしている。というのも、AIを使った価格設定が徐々に市場に浸透しつつあるからだ。AIを使った価格設定によって、より戦略的な値上げ・値下げが可能になる。米国で活用されるAIによる価格設定「ダイナミックプライシング」が良い例だ。プロバスケットボールリーグNBAは大人気のスポーツだが、そのチケットの料金はAIが決めていることが多い。しかも日本では試合が見やすいチケットが高くなるという程度の価格設定だが、NBAでは対戦カード、チームの人気、試合の曜日や天気までも瞬時にAIが分析して価格を決める。これで顧客からすれば最大限買いやすく、販売者側からすれば最大限利益が出る価格設定が可能なのだ。
日本国内で特にAIの価格設定が浸透している業界の一つがホテル業界だ。ホテルの宿泊料は季節や天気などに大きく依存しているため、AIによる価格設定でバラツキが少なく、より多くの利益を上げることができるようになっている。今後も多くの企業が自社と顧客のためにAIによる価格設定を導入することを期待したい。(編集担当:久保田雄城)