進まぬキャッシュレス化 変革必要はサービス提供者?

2018年10月12日 07:10

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規格の不統一性が日本におけるキャッシュレス化を遅らせる要因になっている。サービス提供者はユーザーの視点に立って規格乱立を防ぎ、システムをシンプルして利便性を鮮明にしなければならない。

世界ではすでにスタンダードになりつつあるキャッシュレス化だが、日本では未だに定着が進んでいないといわれる。理由は強固な現金信仰と、キャッシュレスシステムにおける規格の不統一性のためである。今後、日本が世界標準に合わせていくためにはこの二つの壁を突破しなければならないが、そのために何ができるのか。

そもそもキャッシュレスシステムとは、電子マネーや電子通貨、最近では仮想通貨、さらには銀行預金も含まれる。買い物で決済する際の媒体としてはカードとスマホに大別することができ、カードには非接触型とカードリーターを通すタイプ、スマホもApple Payのような非接触型とQRのようにコードを読み込むタイプがある。

カードの非接触型ではiDやSuica、カードリーダーならクレジットカード、スマホの非接触型は先述のApple PayやGoogle Pay、読み込みタイプはQRコードやバーコードがお馴染みだが、とにかく選択肢が多過ぎて、支払い方は多岐にわたる。

実はこの多様性こそが、日本でキャッシュレス化が遅れている理由の一つだという。東洋大学国際経済学科教授の川野祐司氏は「規格が統一されておらずわかりづらい」「ユーザー視点に立っていない」と述べ、周回遅れの原因がサービス提供者側に問題があることを指摘している。要は、規格の乱立を防ぎシステムを一つに統一できていれば、ユーザーにとってキャッシュレスが分かりやすく受け入れやすいものとなり、もっと早く定着が進んだのではないか?というわけである。もちろん現金の便利さや有難さも普及を拒む要因にあるが、サービス提供者側の問題は小さくない。

一方、遅れているとはいいつつ、後進しているわけではない。QRコード決済へは各企業の参入が相次いでいるし、経済産業省もキャッシュレス化促進の施策によりテコ入れを行っている。また一般の人々の間でも、現金を持たないことへのアレルギーは昔ほど強くなく、電子マネーや仮想通貨は身近になってきたといえるだろう。ゆえに、喫緊の課題はサービス提供者がユーザーの視点に立って規格の統一を進め、キャッシュレスシステムの利便性を鮮明にすることだ。状況がシンプルでクリアになれば、普及を止めるブレーキはかからなくなるだろう。(編集担当:久保田雄城)