3月以降、大きく変わった国民の住まいに対する意識。これによって、スマートハウスの市場拡大が加速する可能性が高まった、2011年の住宅業界だった。
未曾有の被害を出した東日本大震災。津波で家を失う人、液状化現象で大きな歪みが出来てしまった家。また、電力不足による計画停電で、想定外の生活を強いられる人達。この災害は人々の中で、住まいに対する意識を完全に変えてしまった。低炭素社会の実現を目指し、その仕様住宅を経済背景や社会情勢と睨めっこしながら、徐々に市場投入していくという、どちらかというと緩やかに未来型住宅への移行を考えている消費者側に合わせた感じが強かった住宅メーカー。もちろん、大手を中心にスマートハウスの実証実験や高性能なエコ住宅販売は行ってはいたが、ここまで状況が変わるとは思っていなかったはずだ。
現在、消費者が住まいに求めるものとして、「安全性」「安心性」が以前にも増して高くなっていることは、今さら言うまでもないが、基本的な耐震性能に加え「制震構造」「免震構造」など、より最新の技術にも消費者の目は向いている。住宅におけるエネルギー関連の部門になると、さらに顕著に動向が見える。震災直後から夏まで、各家庭にまで及んだ第一次節電対策は、より一層住宅に求めるものとして”電力”がクローズアップされることになり、「省エネ」から「創エネ」さらに「畜エネ」までの設備を考える消費者が多くなった。家庭用の3電池のうち、”太陽光電池”はリフォーム市場を含め、加速度的に普及し始めているが”燃料電池”"蓄電池”は、コストが高く、普及する価格帯の登場が待ち望まれている。
そして、この創エネ住宅市場の次には、スマートハウスの存在があり、2011年は「元年」と呼ばれた。震災での復興需要が後押しする形にもなり、一気に加速していく市場として住宅メーカーだけではなく、関連する業界や新規参入企業を含め、注目度も高い。
既に、大和ハウスが10月に業界初のスマートハウス「スマ・エコオリジナル」を発売。11月にはトヨタホームからEV・PHV充電器を標準搭載したスマートハウス「シンセ・アスイエ」を販売開始した。積水ハウスは業界で初めて出展した『東京モーターショー2011』の場で、「来秋の発売を予定」と発表したスマートハウスは、3電池+EVバッテリーの4電池を備える。中堅メーカーでも、アキュラホームの「めぐるecoW」をはじめ、ローコストモデルのスマートハウスが発売され、その市場は2012年以降、一気に膨らむ可能性が出てきた。
そのスマートハウスで重要な役割を持つのが「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」。最初に登場したのは電力の”見える化”だけを実現した「第一次HEMS」。そして、”見える化”に電力の効率的な使い方を最適にする”制御”をプラスした「第二次HEMS」が現在市場では最新となる。そして、最終的に「HEMS」が行き着かなくてはならないのが、電気製品までもコントロールし、家庭内の全ての電力を最適に制御すること。だが、この「第三次HEMS」が市場に投入されるには、解決しなければならない問題が多く存在する。その最も高いハードルは、異なるメーカー間(家電)での制御を行うためのガイドライン作りだ。複数メーカーの機器を1つの「HEMS」で制御する際に、相互接続が必要となり、技術公開や故障発生時の対応など複雑にメーカーが絡み合うために、きちんとした枠組みが無いと、このシステム自体が成立しない。しかし、その問題を解決すべく、東京電力をはじめ、パナソニックなど10社により「HEMSアライアンス」が7月に立ち上げられた。その普及と市場確立を目指し、3年をメドに成果を上げたいとしている。
一方、経済産業省は12月16日に『エコーネットコンソーシアム』が開発した「エコーネットライト」を「HEMS」の標準インターフェイスとして採用することを発表した。また、同月21日には一般公開も行われ、誰でも「HEMS」関連の事業に携われるようになった。これにより、「HEMSアライアンス」が目指すガイドラインの策定にも拍車がかかり、市場活性化がいよいよ現実味を帯びてきた。
ハウスメーカーにとっても激動の2011年ではあったが、2012年はスマートハウス普及に向け、様々な業界からの進出もあるだろう。住宅関連メーカーは、より気の抜けない1年を迎えることになりそうだ。