震災により注目された自動販売機の存在

2012年01月05日 11:00

 2011年3月に発生した東日本大震災は、清涼飲料水業界にも多大な被害をもたらした。製造・充填ラインの損壊や倉庫及び在庫品への影響に加え、ペットボトル、キャップ等の包材確保が困難となったほか、計画停電の影響を受けて無菌状態が維持できないなど問題も発生したとされている。

 しかし、富士経済の調査によると、清涼飲料水市場の2011年見込みは前年比98.5%に留まっている。予測以上に復旧が急スピードで進んだことも理由の一つであるとは考えられるが、震災によりライフラインが寸断され、また原子力発電所の事故により、生活用水への危険性の認識が広まったことなどで首都圏を中心にミネラルウォーターの需要増加が回復を牽引したという見方もある。飲料メーカー各社は緊急増産体制をとって供給し、特に国産品については全ての企業の生産ラインがフル稼働した程だ。4月には日本コカコーラが、大型PETボトル(1.8リットル入り)約18,000本を緊急輸入したことなどからも、その需要激増具合が見てとれる。

 さらに、同調査によると、大手飲料メーカー各社の震災後2カ月の出荷数量は、平均して前年同期比3割以上の伸びを記録しているという。通年で見ても、2010年は猛暑にも関わらず前期比0.5%減と横ばいだったものが、国産品で前年比20.3%の大幅な増加が見込まれ、近年、低迷が続いていた輸入品も7.1%の増加が見込まれている。

 震災に端を発した節電は清涼飲料業界にも大きな影響を与えたのは間違いないだろう。中でも年中電力を消費し続けるイメージの自動販売機はやり玉に挙げられ、「自動販売機不要論」まで挙がったほどである。しかし、震災時において自動販売機は物資の供給面で大いに役立ち、被災地のライフライン復旧過程において、大変活躍したといった話もあり、その必要性が再認識されているのも事実だ。

 これまでも伊藤園やサントリー、キリンビバレッジやアサヒ飲料、ダイドードリンコなど清涼飲料水業界は様々な省エネタイプの自動販売機を導入し、消費電力の低減に向けての取り組みを徐々に進めていた。例えば夏場、電力需要の少ない時間帯に商品を一気に冷やしこみ、需要の多い時間帯にはその冷却を止めるピークカット機能や、商品を冷却することで発生する熱を商品加温熱として再利用するヒートポンプ式など。ダイドードリンコなどは自動販売機1台当たりの年間消費電力量が10年前と比べて約70%弱の削減となっていたという。今回の節電要請により、各社さらなる節電策を講じることとなったが、室内設置の自動販売機は基本的に全機24時間消灯、屋外設置の販売機でも時間帯に応じて消灯を行い、蛍光灯の本数を削減、またLED照明の採用などで、さらなる消費電力の低減を図ったことにより、各社約15%の消費電力低減を実現している。

 12月27日にはアサヒ飲料が、アサヒカルピスビバレッジの展開する自動販売機において、無料ワイヤレス通信サービス「FREEMOBILE」を採用し、自動販売機周辺を無料Wi-Fiスポットとする機能を搭載した自動販売機を飲料メーカーとして初めて展開すると発表した。2011年に賛否を集めた自動販売機の存在が、本来の飲み物を供給するというハード面に加え、ソフト面においても社会的役割をどう担っていくのかということも、2012年の注目ポイントになるかもしれない。