太平洋戦争中、日本に強制徴用され労働を強いられた被害者や被害者の遺族らが日本企業に損害賠償を求めている「徴用工問題」を巡り、日韓関係の悪化が一層懸念されている。安倍政権が貿易問題に発展させたからだ。
政府は1日、スマートフォンやテレビなどに使われる半導体材料(高純度フッ化水素など3品目)の輸出規制を強化する方針を発表。これを受け韓国政府は世界貿易機関(WTO)への提訴など国際法、国内法に依拠し必要な対応措置をとる姿勢を鮮明にした。
徴用工を巡っては、日本政府は1965年の日韓請求権協定で徴用工に対する補償は「解決済みだ」と主張。韓国大法院(最高裁)は「日韓請求権協定では個人の請求権は消滅していない」と指摘したうえで、三菱重工業に対して賠償を命じる判決を下した。
このため、政府は第3国を交えた仲裁委員会の開催を韓国政府に要求。韓国政府は韓国と日本の企業による拠出金で財源を確保し、被害者に慰謝料を支払うという対案を提示したが、政府は「受け入れられない」と拒否。そのうえで日本側の要求に応じさせる狙いで輸出規制強化に踏み切った。
聯合ニュースは日本政府の対応に、韓国の成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源部長官が「輸出規制措置はWTOの協定上原則的に禁止されている」と指摘し「日本が議長国として開催した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)宣言文の『自由、公平、無差別で透明性がある貿易、投資環境の実現に努力する』という合意精神にも真っ向から対立するものだ」と強く非難している旨を報じた。韓国経済団体も「残念でならない」と遺憾を表明していることが報じられた。両国国民感情にまで影響が広がらない冷静で、実効性のある具体的な解決策に向けた対応が両政府に求められている。(編集担当:森高龍二)