10月の消費税増税もにらみ景況の動向に注目が集まっている。国内市場の指標は概ね良好な数字を示しているとはいえ中国をはじめ海外市場の減速感が強まり国内市場でも先行き不透明感が高まりつつある。その中で国内不動産投資に関してはバブルではないかという懸念も出始めたものの、このところ高値警戒感は緩和の方向で推移しているようだ。
22日、商業用不動産サービスのグローバル大手であるJLL(ジョーンズ・ラング・ラサール)が日本国内の商業用不動産投資の市場動向についてレポートを発表しているが、これによれば海外投資家の投資が減少し世界1位であった東京が2位になるなどインバウンド投資に減速感が見られるもののJ-REITによる物件取得が堅調で、その背後にGPIFの先導も見られ、国内の商業ビル投資は安定的かつ好調のようである。
JLLが22日、「日本の商業用不動産投資額 2019年上半期の分析レポート確報値」を発表。レポートによれば、19年上半期の投資額は2兆2430億円でほぼ横ばい(ドル建では2%減)。直近、第2四半期(4~6月)では前年同期比31%増(ドル建28%)の1兆350億円となっている。
世界の都市別ランキングを見ると第1四半期に1位だった東京が上半期全体では2位に後退、大阪も22位から25位に後退と、世界の中での日本の地位は相対的に低下しているようだ。19年上半期におけるインバウンド投資(海外投資家による国内不動産投資)は50%減の2010億円となっている。ちなみに国内投資に占めるシェアは9%である。
地域別の投資額シェアを見ると、東京都心の5区が45%と大きなシェアを占めており、大阪圏が19%となっている。近年の動向は上記2地域への投資が集中している流れで、特に賃料上昇が続く大阪中心部に注目が集まっているようだ。賃料上昇持続を背景に一時期出回った高値警戒感も緩和されつつあることから、レポートでは今後も横ばい程度ながら高水準を維持し投資市場の需給逼迫状態は続くと予測している。
JLLのチーフ・アナリスト谷口学氏は「好調な投資口価格を背景としたJ-REITによる物件取得などがみられ、(現在の国内市場は)堅調に推移」、「GPIF に先導される形で、国内年金基金等の不動産への投資は今後も拡大されると予想され、需給が逼迫した状況は続く」との見通しを示している。(編集担当:久保田雄城)