日産自動車は、欧州5都市、ロンドン、パリ、ミラノ、バルセロナ、ケルンで同時に新型コンパクトSUV「ジューク」を発表した。「ジューク」は、これまで欧州で約100万台を販売していて、第2世代となる新型は洗練された魅力的なデザインと最新の先進技術を採用し、高い実用性やパフォーマンスをさらに向上させたという。
新型「ジューク」はボディを拡大し、室内をより広く快適な空間としながら、23kgの軽量化を実現した。また、高張力鋼板の採用などにより、プラットフォームの剛性をあげ、SUVらしいスポーティで俊敏な運動性能に磨きをかけ、優れた走行性能としたという。
搭載エンジンは1リッター3気筒直噴ターボエンジン、6速MTと7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を組み合わせる。7速DCTにはパドルシフトとドライブモードセレクター(エコ、スタンダード、スポーツ)を装備、走行環境やドライバーの好みに応じてエンジン特性や変速特性を変更できる。
新型「ジューク」にもプロパイロットを搭載した。プロパイロットは高速道路の単一車線でドライバーを支援し、長距離移動や渋滞時のドライバー負荷を軽減。さらに、歩行者や自転車を認識する「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」や、道路標識を認識して車速を調整する「インテリジェントスピードアシスト」、車線逸脱を防止する「インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)」、「RCTA(後退時車両検知警報)」や「BSW(後側方車両検知警報)」など多くの安全技術を採用した。
日産では「ジューク」の新モデルを英国のサンダーランド工場で生産し、11月から欧州で販売をスタートする。
その英国では8月下旬に就任したジョンソン首相が、10月末のEUからの離脱を主張。英議会では合意なき離脱を防ぐために離脱延期を政府に義務付ける法案の審議入りが野党などの賛成多数で決まったが、ジョンソン氏は解散総選挙を提案するなど、強硬姿勢を表面化させている。英国の欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」が現実化すると、EUへの完成車の「輸出」には新たに10%の関税がかかる。なぜ、日産はこの時期に、英国での新モデル生産を発表したのだろうか。
こうした状況を踏まえてホンダは今年2月に、英国生産からからの撤退を発表した。日産も主力SUV「エクストレイル」の次期モデル生産を取りやめる。サンダーランド工場では約7000人が働き、部品など関連産業も合わせれば雇用効果は3万人近いとされる。
新型ジュークを英国生産すると英国以外のヨーロッパ販売価格は割高になるわけで、ただでさえ欧州でのシェア低迷に悩む日産にとって、大きな懸念材料のはずだ。「設備投資などの税制優遇措置といった英国政府からのなんらかのバックアップがあるのでは」と業界関係者は指摘する。が、2019年4?6月期の営業利益が前年同期比98.5%のマイナスとなった。
また、日産の西川広人社長は9月5日、株価に連動して受け取れる報酬をめぐり、西川社長を含む複数の役員が報酬を不正に受け取っていたことを明らかにした。前会長カルロス・ゴーン被告の報酬隠しなどを見逃していたことなどに加え、西川社長らの不正受領も明らかになり、経営不振からの脱却を急ぐ日産に吹く逆風が収まらない。(編集担当:吉田恒)