日産自動車、2019年度第1四半期4~6月期の営業利益が前年同期比98.5%減の16億円、当期純利益が同94.5%減の64億円。絶望的な大減益だ。ちなみに昨年同期の純利益は1158億円だった。同期の連結売上高は2兆3724億円、連結営業利益は16億円、売上高営業利益率は0.1%となった。が、何とか黒字は維持され、ギリギリのところで赤字は回避した。仮に赤字に転落したならば、西川廣人日産社長の責任問題が問われるはずで、その事態だけは避けられたことになる。
再建策。まず、2022年度までにグローバル生産能力を10%削減し、稼働率を高める。具体的には2013年から展開してきた新興国モデル「DATSUN」を打ち切る方針だ。DATSUNの積極展開は、規模拡大路線を強引な手法で牽引したゴーン前会長の施策だった。経営陣にとってDATSUNの否定は、つまりゴーン路線の否定だ。
そして、リストラ計画の柱は人員整理だ。何と2023年3月までに世界の日産グループ従業員の10%、1万2500人を削減する。
日産経営陣は、2019年3月期の通期決算を発表した5月の時点で、業績の大不振を想定していたはずだ。主に北米や欧州での販売不振の惨状は、明らかだったからだ。併せて、大胆な構造改革プランもあったはずだ。それが今回の「大リストラ計画」である。
開示された資料によると、2020年3月期までに、九州・栃木の日本国内・九州福岡と栃木(880人)、米国(1420人)、インド(1710人)、メキシコ(1000人)、インドネシア(830人)など世界8拠点で合計6400人を削減する計画の詳細が示された。なお、2023年3月期までに、残り6拠点で6100人削減する計画だが、その拠点と人員数は開示されていない。
残りの「6拠点」とはどこだろう。日産によれば、拠点とは生産拠点である工場の数ではなく、生産ラインの数だという。生産ラインごとに人員合理化策が取られるわけで、2本の生産ラインが止まれば、工場閉鎖となり得る。
決算会見で西川社長の「(残る候補は)──小型車を生産している海外拠点」という発言があったが、「欧州、日本、米国のさらなる合理化が必要」という見方も根強い。抜本的な固定費削減に直結するのは、人件費が高い先進国における合理化策が急務だからだ。
今期2019年4~6月の日産拠点の生産台数を見ると、英国が前年同期比34.3%減、日本が同20.9%減、この2拠点で稼働率が大きく落ちている。そのため、リストラ圧力が高まることは間違いない。
もっとも厳しい状態にあるのが英国工場だ。今回の情報開示で90人の削減が発表されたが、それだけでは済まないだろう。先般、新たに就任したジョンソン英首相が指し示す“欧州連合(EU)から「合意なき離脱」が現実”となれば、日産英国工場は成り立たないからだ。
また、880人の削減を明らかにした国内拠点の合理化も十分とはいえない。国内市場の低迷はもとより、輸出の低迷が深刻だ。米中の保護主義化、新興国での現地生産化のなか、」国内の年100万台の生産能力は過剰で、この生産体制は大きく削減されるだろう。すでにリストアップされている栃木、福岡に加えて、最大拠点である神奈川追浜も整理・縮小の候補になる可能性は十分にある。
厳しいリストラ計画を公表した日産だが、今のところ2020年3月期に置ける通期業績見通しは変更していない。1万人超の人員削減に係る費用はどうするのか見えないのだ。
今回のリストラ策で業績のV字回復はあるのか。国内販売は「e-Power」頼みで、毎月の新車販売ランクは5位というありさま。一所懸命「ハンズフリー運転をアピールする」CMを流す新型スカイラインが救世主になるとは思えない。
販売促進の目玉はなく、「ポスト・リストラ」戦略は見えない。2023年3月期に「営業利益率6%」の達成……果たして。(編集担当:吉田恒)