日本社会を支える部品の数々! 「超モノづくり部品大賞2019」各賞受賞部品が出揃う

2019年11月03日 11:25

超モノづくり大賞

日本社会の今を縁の下で支える、超絶なモノづくり技術。10月24日「超モノづくり部品大賞2019」各賞の受賞部品が発表された

 機械や電機、自動車から生活関連に至るまで、日本の高度なモノづくり技術で生み出されたメイド・イン・ジャパンの製品は、今でも世界的に大きな評価と信頼を得ている。

 しかしながら、日本のモノづくり産業は今、いくつもの大きな課題を抱えているのが現状だ。少子高齢化による働き手の減少や後継者不足、大都市部への人口集中と地域社会の疲弊衰退、新興国の台頭による産業構造の変化など、厳しい状況が次々と畳みかける中、これまで以上に技術力の維持と強化、付加価値の高い製品の供給が求められるようになっている。

 日本製品の信頼を支えているのは、「縁の下の力持ち」的存在の部品や部材だ。完成品の状態では目に触れるようなことがないところにこそこだわって、手を抜かず、さらには現状に満足することなく、常にその上を目指す。そこに日本のモノづくりの真骨頂がある。

 そんな部品や部材にスポットを当てる「超モノづくり部品大賞2019」の受賞作品が10月24日に発表された。同アワードは、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催するもので、03年に「モノづくり部品大賞」として創設され、08年から現名称に変更されたものの、今年で通算16回目の開催となる。表彰対象は現在、「機械・ロボット」「電気・電子」「モビリティー関連」「環境・資源・エネルギー関連」「健康福祉・バイオ・医療機器」「生活関連」の6分野となっており、受賞部品はこれまでの15年間で累計約540件にのぼる。

 例えば、今年の「電気・電子部品賞」では、ローム株式会社〈6963〉、株式会社椿本チエイン〈6371〉、三木プーリ株式会社、リコー電子デバイス株式会社の4社が受賞しているが、それぞれに大きく内容が異なる。

 ロームが受賞した「EMARMOUR(イーエムアーマー)シリーズ」は、自動車のノイズ対策を大幅に軽減する高EMI耐量オペアンプだ。自動車は高性能化にともなって電子部品の搭載数も増えており、ノイズによる誤動作を防ぐ対策がより重要になっている。同シリーズは、同社製品の中でもISO11452-2による国際的ノイズ評価試験において、全ノイズ周波数帯域での出力電圧変動が±3%以下というノイズ耐量を実現した製品にのみ与えられるブランド名だという。同社の「回路設計技術」「レイアウト技術」「プロセス技術」を駆使して開発されたもので、まさにモノづくり技術の融合ともいえるものだ。

 受賞製品は、圧倒的なノイズ耐性のため、一般品では欠かせない外付けのノイズ対策部品が削減できる。世界的な車載信頼性規格のAEC-Q100に対応することはもちろん、標準的なオペアンプ端子配置で一般的な面実装パッケージとチャンネル数をラインアップしているため、ノイズに懸念のある既存製品から簡単に置き換える事ができる点でも評価が高くなっている。電装化が進む自動車業界のこれからを支える部品となりそうだ。

 一方、椿本チエインが受賞したのは、スマート化が進む工場設備に最適な「小形ギヤモータ  IoT対応自己遮断仕様」だ。生産現場では今、IoTやAIなどの活用が急速に進んでいるが、ここで課題となっているのが、予知保全の問題だ。いくらスマート化しても、事故が起こったり、稼働率が低下しては目も当てられない。しかし、独自で予知保全のシステムを構築することは容易ではない。そこで同社では、汎用ギヤモータに高精度の「電力」「温度」「振動」センサを搭載したユニットを開発し、機械設備の負荷状況の監視・異常時のモータ停止を自動記録する機能や、ネットワークにつなげて遠隔で稼働監視・把握をする機能を一体化した。無償提供される専用ソフトウエアで、設定も状態監視も簡単に行えるので、IoT機器導入のハードルを大きく下げるものとなっている。

 また、三木プーリはトルクをリアルタイムで測定できるセンサー内蔵型の軸継ぎ手(カップリング)「SENSINGFLEX」で受賞。リコー電子デバイスは、超低消費電流 (IQ 0.3 μA)で、電池駆動機器の長時間動作や電池の小型化に貢献する、昇降圧DC/DCコンバーターIC「RP604シリーズ」で受賞しており、同じ「電気・電子部品賞」で括られてはいるものの、各社の特色が出ているのが面白い。この多様性と独自性こそが、日本のモノづくりの底力といえるのではないだろうか。

 日本の産業、経済を支えているのは、こういった目に見えないところで活躍している、卓越したモノづくりの技術であり、それを開発する技術者たちの並々ならぬ努力だ。しかしながら、こういった技術や技術者を奨励するアワードでさえ専門的で、一般に広く認知されているとは言い難い。我々の今の社会を支えてくれている縁の下の技術にも、もう少し関心を持ちたいものだ。(編集担当:藤原伊織)